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本当に人の優しさに触れると嬉しい。
なんかいろんな優しさに触れたここ数日間。

11/30投稿分のつづき。

CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より、遣わされる者
1:再会



「お前さぁ…、暑くねぇの?」
 
 見ていて暑苦しいと言わんばかりに、カシスがうんざりした声をあげた。

 昼前、太陽は一番高いところに昇り、日の光を遮る雲ひとつなく、市場は熱気で満ちていた。

 誰もが薄着で、纏うとしても日よけ用の薄手のショールの中、フィアは分厚いマントを頭からすっぽりと被っていた。おかげで面相も、髪の色も全く見えない。よく見ないと、性別も分からないだろう。
 
「ほっといて」

 フィアとて暑い。マントの中は、早くも蒸し始めていた。

 しかし、こうしないと落ち着かない。彼女の髪色は、人混みの中でもよく目立つ。むしろ、哀しいかな、町の中に居るほうが際立つのだ。

 隣を歩くカシスは、いたって軽装である。
 
「日よけか? ちっとぐらい日に焼けたほうがいいぞ、お前」
「……肌あれがひどいの」
「なんだ、日に当たると灰にでもなるのか?」
「うるさいわね、さっきから! 買い物付き合ってやってんだから、とっとと済ませてきなさいよ!」
「へいへい、すみませんね」

 一喝すると、カシスは面倒くさそうに手を挙げた。

 根本的に無神経なのだ、この男は。

 ふと、カシスが何か見つけて足を止めた。

「ああ、ここだ」
「そう。待ってるから、買ってくれば」
 
 彼の視線の先を追う。石造りの建物で、革製品の店のようだ。とくに、欲しいものはない。というより、そんな金は持ってない。フィアの言葉に、カシスが顔をしかめた。

「外で待ってるつもりか? 暑いだろ」
「指図しないで。私は用がない」

 きっぱりというと、適当にカシスは手を振って店内に入っていった。若干、顔が不満そうだった。

 入り口近くにもたれかかって、深くため息をつく。慣れてないからか。誰かと歩幅を合わせて歩くことや、話しながら歩くことが、とても億劫に感じる。知らず知らずのうちに気が張っていたのだろうか、肩が重い。それほどカシスに気を遣ってやっているつもりもないのだが。

 フードがつくる影から、通りを見渡す。行き交う人は、彼女には目もくれない。それぞれが、それぞれの目的をもって、ただ通り過ぎていく。

 他人がどんな目で自分を見るかなんて、いちいち気にする必要はないことはわかっている。今更自分を変えられるものでもないし、自分の異質な姿を受け容れてもらうことには、あきらめすら感じている。  

 フィアが姿を隠すのは、もうひとつ別の理由があった。

 単純な話、見つかりたくない人間がいる。確実にフィアの跡を追ってきているはずだ。できるだけ、街には近づかないようにしてきた。しかし、全く街に近づかずに生きることもできない。街にいる間は、一見誰かわからない姿を装っている。

 時々マントの裾を揺らして、中に風を取り込む。動かない分、涼しくなってきた。

「ほら」
 
 じゃら、と軽い音を立てて顔の前に何かがぶら下げられた。

 焦点があわないほど顔の前だったので、思わず身を引いてしまった。

 良く見ると、何かの飾りのようだった。

「なんとかいう、木の実で作ったお守りだってよ。やるよ」

 手を差し出すと、それは手のひらにポンと置かれた。

 顔をあげると、ぶっきらぼうな顔したカシスが立っていた。片手には大きな買い物袋が納まっていた。

「まとめ買いしたら、おまけに貰った。俺は要らんから」
「これ……」

 何かの種だろうか、小指の爪ぐらいの赤い実に紐をとおし、それで作った編み物のようだった。実は綺麗に磨かれて光って見えた。指の先でつまんでもちあげると、垂れ下がった木の実達が触れ合って乾いた音を立てた。

「着けとけば?」

 よりによってこの男から何か貰うとは、思いもよらなかった。まじまじとカシスの顔をみつめる。だが、彼はいつもの仏頂面だった。

「……ありがとう」
「ん。行くか」

 ぼんやりと礼の言葉を口にすると、カシスは相槌も適当に、さっさと歩き出してしまった。

 つい貰ってしまったが、手に持っているのもなんである。フィアは髪留めに使っている細紐を取り出した。それらしい金具にとおし、首から提げてみた。そんなに変でもなかった。
 
 足早のカシスに追いつくと、彼は頬を掻きながらぽつりといった。

「まぁ…付き合わせたからな」
「え?」
「なんでもねぇよ。ついでになんか買っとくもの、あるか?」
「えーと…」
 
 そういえば、風邪薬が残り少ない。それを口にしようとしたとき、フィアは背筋がすっと冷えるのを感じた。
 
 おもわず足が止まる。

「? なんだ?」
 
 気づかず数歩先に進んでしまったカシスが、驚いた様子でこちらを振り返った。

 だが、フィアはカシスを見ていなかった。

 カシスの前方に、黒いフードコートを被った人影があった。

 ゆっくりと、人混みの合間を縫うように向かってくる黒い影に、フィアは吸い込まれように魅入っていた。動悸が激しくなる。予感でも、気のせいでもない。彼女の力が感じ取っていた。間違いない。

 マントを握る手に力が篭る。浅はかだった。こんな布で何が防げるというのか? 

 お互いが近づけば、たとえ姿を変えていても分かる。力が二人を引き合わせる。それを無視することはできない。

 出会うしかない。
 
 それは足を止める事無く、左手でそのフードを脱いだ。
 
 黒布の下からこぼれたのは、あどけない少女の顔だった。
 
 薄い水色の瞳。白い肌。
 
 そして、短く切りまとめられた、明るい黄緑色の髪が軽く風になびいた。

--------------------------
新キャラ登場。
フィアが鈍すぎて、どうしてもツンデレ表現がゆるくなるorz
つづっくー

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