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つい調子に乗って
いっぱい投稿しちゃうよ!
CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より 遣わされる者
2:彼女の真実
:
「お前一人で?」
答えながら、彼女は身体を横たわらせた。やはり辛いのだろう。
カシスは、床から腰を離して、彼女の隣に座りなおした。フィアは何も言わなかった。辛そうにきつく目を閉じた横顔が見えた。
その横顔に、言葉を投げかける。
「なんで殺した?」
フィアは目を閉じたままだった。
「皆殺しなんて、ひとりでやるのは難しいだろ。どうやった? 魔法か?」
そういうが、彼女は少しもおもしろがっていないことぐらいわかってた。
「……別に。剣で」
カシスは頷いた。頬杖をついて、張り詰めていた息を少し緩ませる。
フィアが目を開けた。自分の言葉のいい加減さに気づいたのだろう。
嘘にしては、彼女の声は重い。だが、何かおかしい。
「すぐ割れる嘘はやめろ」
「剣も使ったけど、光でも焼いた。あとは――」
フィアが口をつぐんだ。目だけは変わらずカシスを睨んでいた。
「なんか、事情があったんだろ」
嘘ではないのだろう。市場で襲ってきた少女もただならぬ雰囲気だった。フィアがかたくなに人を拒むのも、何かわけがあるとは思っていた。
だが、それでも、違う。
フィアから目を逸らし、天井を見上げる。少し、ほんの少しの間、言葉に詰まる。答えはひとつしかない。分かっているのに、話し方を忘れたかのように、喉は震えて声が出ない。
「なくは、ないさ。こんな生活してれば、な」
思い出が、こんなに深く自分に根付いているとは思わなかった。
「……気分のいいもんじゃない」
自分のことなのに、誰かに触れられて、気づくこともある。嫌なことは、特に。
「……なぜ?」
「さぁ、なんでかね。しょうがなかったんだよ、たぶん。俺が死ぬか、相手が死ぬか、どっちかしかなかった」
しょうがない、というのは、自分への言い訳だ。
たったひとりだが、今でも斬ったのを悔やんでいる。だが斬らねば、カシスが死んでいた。それでも何か他にやりようがあったのでは、と時々考えてしまう。
思考は巡るが答えはでない。いや、答えなどあるはずが無い。あの時だけ、自分の中で時間が止まっているのがわかる。
悔やむというのは、そういうことだ。
「辛くないの?」
耳を疑って、フィアを肩越しに見やる。
からかわれているのか思ったが、彼女はいたって真面目な面持ちだった。
「……凄いこと言うんだな。惚れた女なら、大人しく首を差し出してやるよ」
どこかの芝居じゃあるまいし。なぜ、彼女がそんなことを訊くのか――
ふと、閃いて。カシスはフィアを振り返った。
「恋仲だったのか? お前と、なんだっけ、あのガキのお兄さんとやらと」
眉をひそめて、彼女を見つめる。フィアは、また身体を仰向けに寝かせると、額に手を置いて、目を瞑った。
先ほどの言動といい、寝ぼけているのかと思った。だが声の調子は、しっかりしている。
「お前、言ってることがおかしくないか? それとも俺が馬鹿なのか?」
くす、とフィアが笑った。それ以上の説明をする気はないらしい。
淡い夕日の色がだんだんと薄れ、暗くなっていく。
彼女は左腕を見つめていた。黒布がないことは、もう気づいていたらしい。
左の前腕に、蛇とも魔物ともつかない生き物の影が絡み付いている。
「その痣、刺青じゃないな」
存外、フィアはあっさりと答えた。
「生まれつきか?」
いちいち言葉が足りないのは、話が下手だからか。それとも彼女自身、何を話せばいいのかわからないからだろうか。
フィアは言葉を区切った。ゆっくりと身体を起こす。カシスの目をみて、彼女はかすれた声で呟いた。
「信じられる?」
消えかけた陽光が、見開いた彼女の瞳に宿る。
「あんたの判断基準、疑うわ」
カシスは真面目に答えたつもりだが、彼女は鼻で笑った。
なんと言えば伝わるだろう。
少しの間だけ言葉を選んで、カシスは言った。
「俺を刺さなかった」
フィアが眉をひそめた。
「なによそれ…だから、なに?」
それまで威勢の良かった声が、揺れた。
「殺すとか… そんなの」
できるわけない。
この少女に、むやみに誰かの命を奪うことなど、できるはずがない。
彼女が優しいとか、そんなことじゃない。そんなこと言うつもりも無いし、興味も無い。
だが、彼女はできない。
「自分だって辛かったんでしょ? 人を斬ったこと、悔やんでるんでしょ?」
そんなものは、その場にいた人間の考え方次第で、どうとでも捻じ曲げられる。
カシスが訊きたいのは、彼女の気持ちだ。
どうして、そんなにいつも哀しい顔をしてるんだ?
その目で一体なにを見てきたんだ?
なにをそんなに怯えている?
ゆっくりと。
吐き出す息に紛れて、聴こえなくなりそうな。
そんな震える声で、彼女は告げた。
「イルミナじゃない。私も、セシルじゃない……違うのに……」
わななく唇を押さえる手が、やがて彼女の顔を覆った。
口元の震えは、手を伝い、やがて肩へうつった。
やっと聴こえた。
彼女の、本当の言葉。
「聴いて、くれるの? こんな話を」
たとえ途方もなく長い物語だとしても――
それが、聴きたかったんだ。
-------------------------
カシスのこういうところが好き。
適当にごまかせない正直なフィアも好きだ。
でも上手く物語として表せないところに
自分の文才の限界を感じます。
フィアの目の色は淡青色でいこうと思います(心のメモ)
また水色とか書いていたらごめんなさい。
つづく。
第2章 過去より 遣わされる者
2:彼女の真実
:
嘘にしては、ぬらリと重い、生々しい響きがある。
「お前一人で?」
「そうよ」
答えながら、彼女は身体を横たわらせた。やはり辛いのだろう。
カシスは、床から腰を離して、彼女の隣に座りなおした。フィアは何も言わなかった。辛そうにきつく目を閉じた横顔が見えた。
その横顔に、言葉を投げかける。
「なんで殺した?」
「なんで、って?」
フィアは目を閉じたままだった。
「皆殺しなんて、ひとりでやるのは難しいだろ。どうやった? 魔法か?」
「……おもしろいこと訊くのね」
そういうが、彼女は少しもおもしろがっていないことぐらいわかってた。
「……別に。剣で」
「そうか」
カシスは頷いた。頬杖をついて、張り詰めていた息を少し緩ませる。
「すげぇな。すぐ脂で鈍って、大根だって斬れねぇぞ」
フィアが目を開けた。自分の言葉のいい加減さに気づいたのだろう。
嘘にしては、彼女の声は重い。だが、何かおかしい。
「すぐ割れる嘘はやめろ」
「嘘じゃない」
フィアの反応は早かった。肘をついて、少しだけ上半身を浮かせると、カシスを睨んだ。
「剣も使ったけど、光でも焼いた。あとは――」
「ただの殺人嗜好者だったら、自分の手口はもっと楽しそうに話すもんだ」
フィアが口をつぐんだ。目だけは変わらずカシスを睨んでいた。
「なんか、事情があったんだろ」
嘘ではないのだろう。市場で襲ってきた少女もただならぬ雰囲気だった。フィアがかたくなに人を拒むのも、何かわけがあるとは思っていた。
だが、それでも、違う。
「人を斬ったこと、あるの?」
カシスは苦笑を浮かべた。
そんな問いで切り返されるとは思わなかった、というのもある。
それより、彼女の問いかけが不覚にも胸に刺さったということが、自嘲をよぶ。
そんな問いで切り返されるとは思わなかった、というのもある。
それより、彼女の問いかけが不覚にも胸に刺さったということが、自嘲をよぶ。
フィアから目を逸らし、天井を見上げる。少し、ほんの少しの間、言葉に詰まる。答えはひとつしかない。分かっているのに、話し方を忘れたかのように、喉は震えて声が出ない。
「なくは、ないさ。こんな生活してれば、な」
必死で探して、やっと出て来たのはその程度の言葉だった。
思い出が、こんなに深く自分に根付いているとは思わなかった。
「……気分のいいもんじゃない」
自分のことなのに、誰かに触れられて、気づくこともある。嫌なことは、特に。
「……なぜ?」
ためらいがちに、フィアが尋ねた。肩をすくめる。
「さぁ、なんでかね。しょうがなかったんだよ、たぶん。俺が死ぬか、相手が死ぬか、どっちかしかなかった」
しょうがない、というのは、自分への言い訳だ。
たったひとりだが、今でも斬ったのを悔やんでいる。だが斬らねば、カシスが死んでいた。それでも何か他にやりようがあったのでは、と時々考えてしまう。
思考は巡るが答えはでない。いや、答えなどあるはずが無い。あの時だけ、自分の中で時間が止まっているのがわかる。
悔やむというのは、そういうことだ。
「辛くないの?」
「辛いよ。できれば斬りたくなかった」
「恋人?」
耳を疑って、フィアを肩越しに見やる。
からかわれているのか思ったが、彼女はいたって真面目な面持ちだった。
「……凄いこと言うんだな。惚れた女なら、大人しく首を差し出してやるよ」
どこかの芝居じゃあるまいし。なぜ、彼女がそんなことを訊くのか――
ふと、閃いて。カシスはフィアを振り返った。
「恋仲だったのか? お前と、なんだっけ、あのガキのお兄さんとやらと」
「私じゃないけど、サイは親友だった。すごく信頼してた」
「……ん? 誰と誰が親友だったって?」
「セシルと、サイが。小さい頃から、ずっと」
「せしる?」
「私」
「……お前は、親友じゃなかったんだろ?」
「そう」
眉をひそめて、彼女を見つめる。フィアは、また身体を仰向けに寝かせると、額に手を置いて、目を瞑った。
先ほどの言動といい、寝ぼけているのかと思った。だが声の調子は、しっかりしている。
「お前、言ってることがおかしくないか? それとも俺が馬鹿なのか?」
「馬鹿なんじゃない?」
くす、とフィアが笑った。それ以上の説明をする気はないらしい。
淡い夕日の色がだんだんと薄れ、暗くなっていく。
彼女は左腕を見つめていた。黒布がないことは、もう気づいていたらしい。
左の前腕に、蛇とも魔物ともつかない生き物の影が絡み付いている。
「その痣、刺青じゃないな」
「そうよ」
存外、フィアはあっさりと答えた。
「生まれつきか?」
「1年前から。気づいたら、あった」
「気づいたら?」
いちいち言葉が足りないのは、話が下手だからか。それとも彼女自身、何を話せばいいのかわからないからだろうか。
「イルミナに、初めて会ったとき。命拾いして…我に返ったときには、この痣が」
フィアは言葉を区切った。ゆっくりと身体を起こす。カシスの目をみて、彼女はかすれた声で呟いた。
「信じられる?」
「人殺しの話よりも」
消えかけた陽光が、見開いた彼女の瞳に宿る。
「あんたの判断基準、疑うわ」
「声が違う」
「いい耳してるのね」
カシスは真面目に答えたつもりだが、彼女は鼻で笑った。
なんと言えば伝わるだろう。
少しの間だけ言葉を選んで、カシスは言った。
「俺を刺さなかった」
「え?」
「さっき」
出し抜けに言葉を放っていることは分かっていた。
フィアは呆気にとられたようだった。
出し抜けに言葉を放っていることは分かっていた。
フィアは呆気にとられたようだった。
「……あんたがよけたんでしょ」
「次手はなかった」
フィアが眉をひそめた。
「なによそれ…だから、なに?」
「お前は、あの娘も殺さなかった」
「だって、それは――」
それまで威勢の良かった声が、揺れた。
「殺すとか… そんなの」
できるわけない。
この少女に、むやみに誰かの命を奪うことなど、できるはずがない。
彼女が優しいとか、そんなことじゃない。そんなこと言うつもりも無いし、興味も無い。
だが、彼女はできない。
「自分だって辛かったんでしょ? 人を斬ったこと、悔やんでるんでしょ?」
「そうだな」
「だったら、どうしてそんなこと言うの?」
躍起になったフィアが、跳ね起きた。
刺すほどに鋭く輝く、儚く彩られた淡青色の瞳。
「お前が嘘つくからだ」
「嘘なんかついてないって!」
「自分の気持ちに嘘ついてんだろ」
事実なんて、どうだっていい。
「だったら、どうしてそんなこと言うの?」
躍起になったフィアが、跳ね起きた。
刺すほどに鋭く輝く、儚く彩られた淡青色の瞳。
「お前が嘘つくからだ」
「嘘なんかついてないって!」
「自分の気持ちに嘘ついてんだろ」
事実なんて、どうだっていい。
そんなものは、その場にいた人間の考え方次第で、どうとでも捻じ曲げられる。
カシスが訊きたいのは、彼女の気持ちだ。
どうして、そんなにいつも哀しい顔をしてるんだ?
その目で一体なにを見てきたんだ?
なにをそんなに怯えている?
「……あの子は、イルミナじゃない」
ゆっくりと。
吐き出す息に紛れて、聴こえなくなりそうな。
そんな震える声で、彼女は告げた。
「イルミナじゃない。私も、セシルじゃない……違うのに……」
わななく唇を押さえる手が、やがて彼女の顔を覆った。
口元の震えは、手を伝い、やがて肩へうつった。
「一族なんて知らないの。私は、私は殺してなんか、いないし……何も知らない……」
やっと聴こえた。
彼女の、本当の言葉。
「聴いて、くれるの? こんな話を」
たとえ途方もなく長い物語だとしても――
「俺でよければ」
それが、聴きたかったんだ。
-------------------------
カシスのこういうところが好き。
適当にごまかせない正直なフィアも好きだ。
でも上手く物語として表せないところに
自分の文才の限界を感じます。
フィアの目の色は淡青色でいこうと思います(心のメモ)
また水色とか書いていたらごめんなさい。
つづく。
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