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バンプ新曲発売おめでとー!

11/25投稿分のつづき。
第1章完結です。


CHILDREN OF GROUND
第1章 沈黙の森

:エピローグ

 空は、満天の星空だった。涼しい夜風が頬をなでる。柔らかい草地に寝転がって、冷えた心地よい空気を深く吸い込む。久しく聞いてなかった虫の鳴き声が響く。

 どこかの街道脇だった。なだらかな丘の下のほうに、馬車道が見える。

「此処どこかなぁ…」

 クノンの他愛のない独り言に、カシスは苦笑した。

「案外あの世かも知れねぇな」
「そっちのほうが説得力あるよ。空間転移なんてありえない。砂で運び込んだなんて…いくら龍でもそんな…」
「さぁてね」
 
 ぶつぶつと、クノンは独りの世界に張り込んでしまった。

 生あくびをかみ殺しながら適当に合いの手を入れていると、傍らのフィアが身じろぎをした。

 ゆっくりと彼女の目が開き、すぐにはっとして跳ね起きた。

「ここは……」
「知らねえっての」

 言ってやると、びくりとしてフィアがカシスを振り返った。混乱しているのか、頭を抱えて呆然としている。

「一体……龍は?」
「《沈黙の石》ならぶっ壊れたよ。あの空洞もつぶれた。ついでにいうとお前は気絶してた」

 フィアは頭を抱えたまま考え込んでいた。もう少し何か訊いてくるかと思ったら、

「そう……よかった」

 それだけつぶやいて、満足げに頷いた。それがあまりにも自然な仕草だったので、カシスも思わず納得しかけた。だが気づいて跳ね起きる。

「いやいやいや良くねぇよ。こちとらどっかの誰かさんのせいで死に掛けたんだぞ? で、収穫何もなしだぞ?」

 すると、彼女は何かを放って寄越した。片手で受け取る。

「それが要るんでしょ? これで勘弁してよ」

 血のような、真紅の結晶。拳大の《沈黙の石》の欠片だった。

「お前……」
「ごめんね、巻き込んで。私はもう行くわ」

 フィアはそのまま立ち上がって荷を担ぎ出した。

 クノンが驚いた声をあげた。

「そんな……まだ夜だよ?」
「もうすぐ夜明けよ」

 フィアは空をみあげ、しばし星を睨んでいた。

「……北は、この街道の先ね」

 呟くと、二人を振り返って言った。

「じゃあね。おかげで助かったわ……ありがとう、本当に」
「いや。気ぃつけてな」
「こっちこそありがとう、フィア」

 クノンとカシスは軽く片手を挙げて答えた。彼女は、ふっと楽しげに微笑すると、同じように片手を挙げて答えて背を向けた。

 フィアは振り返りもせず、真直ぐ街道へ降りていった。

 その後姿を、カシスはぼんやりと見つめながらぼやいた。

「……あいつ、『ごめんね』ひとつで済ませやがったよ」
「『ありがとう』とも言ったじゃないか」
「けっ」

 嘆息しながら、カシスも立ち上がった。服についた砂を払う。

「さぁて。俺も行くとしますかね」

 そして唯一の所持品である愛用の剣を手に取った。
 
 わざと時間をかけて、ゆっくりと剣帯を腰に巻く。ちらりとクノンを見やる。彼は、ぼんやりと星空を眺めているようだった。

 
「なぁクノン。お前はどうするんだ? これから」

「ん? 僕?」

 クノンは腕をくみ、虚空を見上げ、ちょっと小首をかしげながら考え込むフリをした。

「そーだなぁ…どうしようかなぁ」

 わざとらしくクノンの視線がふらふらと彷徨う。

 最後にカシスと目があった。ニヤリと笑いかけると、クノンも似たような笑いを返してきた。まったく不似合いだったが。

 考えるよりも口にするよりもはやく。答えなど決まっている。

 二人は右手同士を打ち合わせた。

 そのままカシスはクノンを助け起こすと、荷物を担ぎ、駆け足で街道に向かう。
 
 日が登るには、まだ早すぎる夜明けだった。

--------------------
ここまで御付き合いくださってありがとうございます!!
1章でまさかひと月かかるとは;; 先が思いやられます…
不定期連載ですが、まだまだつづけていこうと思います。
今後ともどうぞよろしくです。
第2章に続きマス。

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