部活って嫌なところだ。

合気道部にくる人間ってなんか無垢で純粋だ。
誰も彼もが優しくて、誰も彼もが薄情だ。
なんて嫌なところなんだ。

2年を共にした仲間を見捨てられる無垢さ。
そして他人の言葉を真っ向から信じられる純粋さ。

同期なのに引き止めない薄情さ。
同じ葛藤を持っていたからこそ、
気持ちがわかるからこそ引き止めない優しさ。

そんなものは全部ごまかしだろうが。

無垢さも純粋さも、言い換えれば愚鈍なだけ。
薄情さも優しさも、結局は臆病なだけ。
そんなものが、一体誰のためになるって？
ふざけるな。
後先考えず、そんな言い分を受け容れてしまう連中の鼻っ面殴ってやりたい。

どうして誰言わないんだ。
世の中そんなに甘くない。
今まで築いてきた関係を、あっさり捨てられる奴が、
他に移ったって上手くいくわけないだろう？
嫌なことから逃げて、好きなことだけして、
そんなことで生き残れるわけないだろう？

どうして誰も。
どうしてそんなに薄情なんだ。
どうしてそんなに優しいんだ。

それでも
あまりにも無垢な奴なんで、脆い奴なんで
「いなくなったら寂しくなるなぁ」しか言えなかった。
卑怯だ、私も。薄情だ。臆病だ。

ああ、くそったれめ。
どうしてもっと早くに気づいてやれなかったんだ。
出来ることがあったろうに。
どうしてここに居るんだろうか、私は。

どうしてあの人がしてくれたように、
たくさんの先輩がそうしてくれたように、
殴って叱ってやれなかったんだ。

消えたくなるほど、反吐が出る。