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第4章完結。伏線ばらまきすぎて回収できるやらー やらやら。
CHIlLDRENOFGROUND
第4章: 千年の森
エピローグ:
その日はそのまま野宿し、翌日森を抜けることになった。
森を抜けたあとは、東に進むことになった。目指すはオルトワ、クノンの故郷だ。
視界から木々が減り、明るい空のしたに出たとき、カシスはあることを思い出した。
「ああ、そうだ。フィア」
カシスは、腰の道具入れから、赤い実の御守りを取り出した。
「あれ? これ ……」
戸惑っているフィアの手に、御守りを載せる。
「猫―― じゃなかった、ラーガが持ってたんだよ」
フィアの隣を歩く、金色の猫を示しながら、事の経緯を説明する。
「どうしてそんなことを?」
フィアが訝しげにラーガを見た。ラーガは聞いているのか、前を向いてフィアの一歩先を歩いている。
「ねぇ、ちょっと、ラーガってば」
「都合よく猫が人の言葉で説明してくれたら、楽でいいな」
カシスは半眼で告げると、フィアが睨み返してきた。
「たぶん、カシスのこと嫌いなのよ」
「そりゃいい。俺も、猫より犬のほうが好きだ」
フィアはムッとした表情を浮かべると、半ば叩きつけるように、御守りをカシスに付き返した。あまりに勢いがよかったため、カシスはその場に立ち止まってしまった。
「なんだよ?」
フィアは大股で先に進んでいく。
「もう要らない! カシスの馬鹿!」
手に残った御守りを持て余していると、視線を感じる。
足元を見ると、ラーガがじっとこっちを見ている。
「…… なんだ? 欲しいのか?」
その言葉が通じると思ったわけではない。実際、ラーガはすぐ興味を失ったように視線をそらすと、フィアの後に付いていった。
「何してるの? カシス」
追い付いてきたクノンが、こちらの顔をうかがってくる。
「別に」
「あれ? それ、フィアのじゃないの?」
相変わらずめざとく、クノンは手の中に御守りを指差した。
「要るか? 要らないって、つっかえされたところだ」
「また怒らせたの? カシス」
「『また』ってどういう意味だコラ」
「ほう。珍しい飾りだな」
ひょいと、クノンの肩越しにハイルが覗き込んできた。御守りなぞ早くしまって先を急ぎたいだけに、カシスはうんざりしてきた。
「御守りだってさ」
クノンが説明すると、ハイルが感慨深そうに頷いた。
「なるほど。再会を願う、か」
「あん?」
ハイルの一言に眉をひそめる。さも当然そうな顔のまま、ハイルが言いなおした。
「魔力で加工してあるようだが、それはサネカの実だろう? サネカの花言葉は、再生、あるいは再会だ」
願いが通じたのだな、とハイルが笑った。フィアと無事合流できたことを言っているのだろう。カシスは取り合わなかった。
小さな赤い実をまじまじとみる。カシスの記憶のあるサネカは、もっと実が葡萄のような房になっているものだ。その実を一つずつ取り、加工して、編み上げたのだろうか。それほど手の込んだ御守りだとは思わなかった。
「魔力で加工?」
「知らんか? 薬品を使った防腐加工より効きがいいし安価だから、最近よく使われている手法だ」
「詳しいね、ハイル。意外だな」
「いい商売になるものでな」
兄弟の話題が逸れたところで、カシスはサネカの御守りを道具入れに収め、歩き出した。
前方に眼を向けると、思ったよりフィアは先にいた。深緑の外套を、また頭からすっぽりかぶっている。今更隠すものでもないだろうに。その足元を金色の獣が寄り添うように歩いている。
先を急いだところで、道はハイルしか知らない。あえて追い付く必要もないし、フィアもそれに気付いて戻ってくるだろう。それまで、しばらくは取り合わずにいよう。
(再生と、再会)
不思議と、その花言葉は耳について離れなかった。
* * *
「君の言葉は真実には程遠いな。フェルベナス」
『貴方ほどではない』
「シルギルトアは既に死んでいたさ。それ以上でも、以下でもない。それこそが真実だ。あの娘の光など、微々たるもの。空気の澄んだ夜に、星が瞬いて見えるようなもの」
『ただ、その瞬きが、貴方を彼女の元に導いてしまった』
「もともとあれは私の物だ。ヴァルカスタも還ってきた」
『いいえ。あなたは決して手に入れることはできない。あなたこそ、真実には決して触れることができない』
「追い求めているのは私ではない。全てが、私を求めて尋ねてくるのだ。真実でさえも」
『……。皆が貴方を探すのは、貴方が奪うからだ』
「その通りだ。私は全てを奪う者だ。ゆえに私はここにあるもの全て、そのものだ」
『いずれ滅ぼす。我らの牙が ――』
「だがそれは今ではないのだね? フェルベナス」
嘲笑の余韻を残して。
その存在は去って行った。
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サネカなんて実はないです。
第4章終わった! 次はオルトワ編。
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