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ココアの粉を買ったのに
牛乳買い忘れた、今日。

12/09投稿分のつづき。

CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より 遣わされる者
2:彼女の真実



「コンリュウ? 龍なのか?」
 
 筋肉馬鹿、という言葉は、この際聴かなかったことにしよう。

 だが、龍とは聞き捨てならない。フィアが、はっと息を飲んだ。 

「どういうことだ? 龍を探してる、っていったな。関係あるのか?」

 尋ねる良い機会だ。フィアは、視線を逸らし、自分の身体を抱きかかえた。

「何? 聞き間違いじゃない?」
「ごまかすなよ」

 怪我人に詰問するのは気が引けたが、そうでもしないと口を割りそうにない。

 そもそもこの娘、奇怪な点が多い。何故ひとりで龍を探しているのか。その髪の色はなんなのか。あの、イルミナとかいう娘の髪も緑だった。二人はどういう関係なのか。彼女の持つ不思議な力と関係あるのか。
 
 そして。彼女は気づいているのだろうか。いつも左腕に巻いていた布がなくなっているのを。その下に、痣とも刺青とつかぬ影が張り付いているのを。

 彼女は、一体何者なのか?

 フィアは、押し黙った。何か、考えている様子だった。

 おもむろに彼女はシーツを跳ね上げると、ベッドから降りた。ぎょっとして、カシスは止めようとした。まだ動けるような体調ではないはずだ。

「おい、まだ寝てろって。顔色悪いぞ」
「平気よ」

 立っているがやっとのようだ。足元がおぼつかない。支えようとするカシスを押しのけ、部屋を見回して、何かを探している。

「私のマントは?」
「どこに行くつもりだ?」

 自分でもわかるほど、声がきつくなる。

 お構いなしに彼女はカシスには背を向けて、ベッド下に置いていた荷物を引っ張り出した。

「…ちょっと、そこまで」
「ちょっとそこまでで、なんでそんなに荷物がいるんだよ」

 カシスは彼女に近寄ると、ためらいながらも左肩掴んだ。

「出て行くつもりなのか?」
「だったら何よ――ちょっと、離して」

 掴んだ肩が――いや、全身が震えている。立っているのがやっとのくせに、振り払う体力もないくせに、出て行ってどうするというのか。

 どうしてそこまで、ひとりで抱え込もうとするのか。

 あえて厳しい顔で怒鳴った。

「そんな体で出て行って、また襲われたらどうすんだ!?」
「死ぬわ。今度こそ」
 
 薄く笑う。血の気のない顔で。

 その顔が苛立たしくて。
 
 カシスは空いた手を振り上げた。フィアの目が、大きく見開かれ、振り上げかけたカシスの手を見つめている。彼女のその目をみて、カシスは手を止めた。

 覇気のない、怯えきった瞳。
 
 彼女は、気丈に振舞っているだけだ。自分の命を軽んじているわけじゃない。誰にも縋ることができないような理由があって、だから平気な振りして笑っているだけだ。

(俺が追い詰めてどうすんだ)
 
 振り上げた手を降ろし、掴んでいた手をそっと放す。離れるでもなくその場に佇む。身長差のせいで、自然と彼女を見下ろす形になる。フィアは動かず、睨むようにカシスを見上げていた。

 もし膝を曲げて目線を合わせれば、彼女は嫌がるのだろうか。ふと、そんな疑問が脳裏をよぎった。

「なんで、狙われてるんだ? あんな子供に」
「……知りたいの?」

 足から力が抜けたのか、よろめいたフィアは、カシスの腕にすがった。

 とっさに支えた彼女の体は、死人のようにひんやりと冷たくて、思わず鳥肌が立った。

「おい、大丈夫か?」

 座らせたほうがいい。カシスは、力ない彼女の身体を支えると、ベッドに腰掛けさせた。フィアは逆らわなかった。呼吸が荒い。意識が遠いのかもしれない。目を瞑って、耐えるように口元に手を添えていた。
 
 カシスは床に膝をついた。彼女の言葉を待つ。今、フィアは、何か話そうとしている。

「私が、あの子の同胞を、皆殺しにしたからよ」
「……は?」

 何かの聴き間違いかと思った。眉根を寄せて訝しげにフィアのほうを見る。

 彼女は、焦点の定まらない目で、床を見つめていた。

「全部よ。一族みんな。何人斬ったかしら…… あの子のお兄さんは、目の前で殺したわ」

 カシスは二の句がつげなかった。

 人を、殺した? それで命を狙われている? 

「残念ね。助けた奴が人殺しなんて」
 
 フィアが長い髪を払った。
 
 夕日の色に染まりきれない緑が、鮮やかに光る。 

「わかった? 私なんか、あの場に捨てておけばよかったのよ」

 ふっ、とフィアが苦笑をもらす。


-----------
大丈夫かしら、このヒロイン。
主人公の想いにつづく。

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