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よーし、そろそろ新しい生活にも慣れてきたから更新するぞー!
CHIlLDRENOFGROUND
第4章: 千年の森
:
視界は白で塗りつぶされ、力の奔流は風となって髪をかき混ぜた。
これでいい。もう大丈夫。
きっといつか、わかってくれる。それで十分だ。
名前を呼ばれた気がした。振り返ると、彼が必死でこちらに手を伸ばしていた。
同じように手を伸ばし、心配そうなその顔に向かって、彼女は微笑んだ。
大丈夫。
大丈夫、私たちには、約束があるから。
* * *
指先がビクリと引きつって目が覚めた。
目を開くと、木々に覆われた先に、青い空が見えた。驚いて起き上がると、突き刺さるような痛みが頭蓋に広がった。
「うっ……」
頭を抱えて首をふる。
「カシス!」
すぐ近くに座り込んでいたクノンが明るい声をあげた。
応えてやりたいところだが、思いのほか頭痛がひどい。
「あー… 頭いてぇ……」
「大丈夫か?」
ハイルの気遣わしげな声が聴こえた。軽く手を振って応える。
なんだかひどく疲れる夢を見た。そのせいか、寝ていた割には疲労が残っている。全身が気だるい。
(……夢、か)
なんだか腑に落ちない。何か忘れているときのように、居心地が悪い。だが、考えようとしても、頭痛が邪魔をする。カシスは嘆息すると、こめかみを揉んで気を紛らわせた。
「カシス、傷は大丈夫? 痛まない?」
「傷?」
言われて思い出す。そういえば、大蛇に左肩を咬まれたはずだ。手を添えるが、まったく疼く様子はない。服は血でべったりとしているが、その下に傷があるように思えない。肩を回してみるが、違和感のひとつもない。
「いや、全然」
「さすがだな」
ハイルが感嘆の声をあげた。拳を握って、目を輝かせている。
「あれほどの傷を後遺症もなく完治させるとは、聖法は話に聞く以上の力だ」
「たまたま駆けつけたフィアが治してくれたんだって。よかったね、カシス」
義兄をまったく無視して、クノンが補足した。
「フィアが? どういうことだ?」
よく見れば、クノンとハイルのすぐ後ろで、誰かが荷を枕にして横になっている。緑の頭が、毛布の隙間から覗いている。寝ている誰かは間違いなくフィアだった。その傍らには、見覚えのある金色の猫が腹這いに伏せていた。
「フィアなら、無事だよ」
「その無事な奴がなんで寝てるんだ?」
「べつに、寝てないわよ」
のそりとフィアが起き上がった。頭を押さえて、不機嫌そうにしている。
猫が起き上がって、彼女の肩に鼻を押し付けた。フィアは、慣れた様子で、腕を回して顎を掻いてやっていた。
「なんだ、無事だったの」
「少しぐらい、愛想よく言えねぇのか」
いつも通りの彼女だった。胸のつかえがやっととれた気がした。
頭を掻く。頭痛はだいぶ引いていた。
「まぁ、なんだ、助かったよ。大したもんだな」
そういうと、フィアは押し黙った。猫を撫でながら、何か考え込んでいるようにも見えた。
「どうかしたか?」
「べつに。もともと大した怪我じゃなかったんじゃない? 大袈裟なのよ、カシスは」
ふい、とフィアが顔をそむけた。照れているのだとしたら可愛いものだが、どうもそういう様子ではない。問い詰めたところで、そう簡単に話す彼女でもない。カシスは話を変えた。
「で? お前、今までどこに居たんだ?」
フィアはごく簡潔に述べた。
「途中で動けなくなって。ラーガに助けてもらったの」
そういって、金色の猫の背を撫でる。ラーガというのは、その猫の名であるらしい。
「そういや、その猫、なんなんだ? いやに懐いているな」
「ラーガは猫じゃないわ。ね?」
フィアはそう言って、猫に同意を求めた。
ラーガと呼ばれた獣は顔をあげ、フィアを見た。尻尾だけが何か言いたげに揺れていたが、別に返事をする様子もない。
「どうしたの? ラーガ」
フィアが猫に熱心に話しかけるが、ラーガは無言のまま、また伏せた。
「猫の言葉でもわかるのか、フィア」
「そういうんじゃなくて……」
フィアは言葉を濁した。それ以上話しかけることは、あきらめたらしい。
「また今度、説明するわ」
「そうかい」
彼女の内緒話は今に始まったことではない。それに、今はハイルもいる。初対面の人間を前にして、言いたくないこともあるだろう。
(そうだな、無理に話さなくてもわかることだし――)
「ん?」
声が漏れる。
「なによ?」
フィアが怪訝そうに眉根を寄せた。
「…… いや」
居心地の悪さを覚えて、髪の毛を掻き上げる。
頭がすっきりしないのは、きっと怪我のせいだろう。カシスは目を閉じて、もう一度寝ころんだ。止める者はおらず、再び眠りに落ちたが、もう夢は見なかった。
-----------------------------------
次でこの章も終わり? かな?←
つづくー
第4章: 千年の森
:
視界は白で塗りつぶされ、力の奔流は風となって髪をかき混ぜた。
これでいい。もう大丈夫。
きっといつか、わかってくれる。それで十分だ。
名前を呼ばれた気がした。振り返ると、彼が必死でこちらに手を伸ばしていた。
同じように手を伸ばし、心配そうなその顔に向かって、彼女は微笑んだ。
大丈夫。
大丈夫、私たちには、約束があるから。
* * *
指先がビクリと引きつって目が覚めた。
目を開くと、木々に覆われた先に、青い空が見えた。驚いて起き上がると、突き刺さるような痛みが頭蓋に広がった。
「うっ……」
頭を抱えて首をふる。
「カシス!」
すぐ近くに座り込んでいたクノンが明るい声をあげた。
応えてやりたいところだが、思いのほか頭痛がひどい。
「あー… 頭いてぇ……」
「大丈夫か?」
ハイルの気遣わしげな声が聴こえた。軽く手を振って応える。
なんだかひどく疲れる夢を見た。そのせいか、寝ていた割には疲労が残っている。全身が気だるい。
(……夢、か)
なんだか腑に落ちない。何か忘れているときのように、居心地が悪い。だが、考えようとしても、頭痛が邪魔をする。カシスは嘆息すると、こめかみを揉んで気を紛らわせた。
「カシス、傷は大丈夫? 痛まない?」
「傷?」
言われて思い出す。そういえば、大蛇に左肩を咬まれたはずだ。手を添えるが、まったく疼く様子はない。服は血でべったりとしているが、その下に傷があるように思えない。肩を回してみるが、違和感のひとつもない。
「いや、全然」
「さすがだな」
ハイルが感嘆の声をあげた。拳を握って、目を輝かせている。
「あれほどの傷を後遺症もなく完治させるとは、聖法は話に聞く以上の力だ」
「たまたま駆けつけたフィアが治してくれたんだって。よかったね、カシス」
義兄をまったく無視して、クノンが補足した。
「フィアが? どういうことだ?」
よく見れば、クノンとハイルのすぐ後ろで、誰かが荷を枕にして横になっている。緑の頭が、毛布の隙間から覗いている。寝ている誰かは間違いなくフィアだった。その傍らには、見覚えのある金色の猫が腹這いに伏せていた。
「フィアなら、無事だよ」
「その無事な奴がなんで寝てるんだ?」
「べつに、寝てないわよ」
のそりとフィアが起き上がった。頭を押さえて、不機嫌そうにしている。
猫が起き上がって、彼女の肩に鼻を押し付けた。フィアは、慣れた様子で、腕を回して顎を掻いてやっていた。
「なんだ、無事だったの」
「少しぐらい、愛想よく言えねぇのか」
いつも通りの彼女だった。胸のつかえがやっととれた気がした。
頭を掻く。頭痛はだいぶ引いていた。
「まぁ、なんだ、助かったよ。大したもんだな」
そういうと、フィアは押し黙った。猫を撫でながら、何か考え込んでいるようにも見えた。
「どうかしたか?」
「べつに。もともと大した怪我じゃなかったんじゃない? 大袈裟なのよ、カシスは」
ふい、とフィアが顔をそむけた。照れているのだとしたら可愛いものだが、どうもそういう様子ではない。問い詰めたところで、そう簡単に話す彼女でもない。カシスは話を変えた。
「で? お前、今までどこに居たんだ?」
フィアはごく簡潔に述べた。
「途中で動けなくなって。ラーガに助けてもらったの」
そういって、金色の猫の背を撫でる。ラーガというのは、その猫の名であるらしい。
「そういや、その猫、なんなんだ? いやに懐いているな」
「ラーガは猫じゃないわ。ね?」
フィアはそう言って、猫に同意を求めた。
ラーガと呼ばれた獣は顔をあげ、フィアを見た。尻尾だけが何か言いたげに揺れていたが、別に返事をする様子もない。
「どうしたの? ラーガ」
フィアが猫に熱心に話しかけるが、ラーガは無言のまま、また伏せた。
「猫の言葉でもわかるのか、フィア」
「そういうんじゃなくて……」
フィアは言葉を濁した。それ以上話しかけることは、あきらめたらしい。
「また今度、説明するわ」
「そうかい」
彼女の内緒話は今に始まったことではない。それに、今はハイルもいる。初対面の人間を前にして、言いたくないこともあるだろう。
(そうだな、無理に話さなくてもわかることだし――)
「ん?」
声が漏れる。
「なによ?」
フィアが怪訝そうに眉根を寄せた。
「…… いや」
居心地の悪さを覚えて、髪の毛を掻き上げる。
頭がすっきりしないのは、きっと怪我のせいだろう。カシスは目を閉じて、もう一度寝ころんだ。止める者はおらず、再び眠りに落ちたが、もう夢は見なかった。
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次でこの章も終わり? かな?←
つづくー
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