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誕生日プレゼントに
聖☆おにいさんの1巻をもらった。
素でうれしい(´∀`)
12/18投稿文のつづき。
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CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より、遣わされる者
4:牙
あの頃は、なにもかも幸せだった。
石造りの大きな宮廷で暮らし、優しい人々に囲まれて過ごした。母のようなレリス=パラウスやフライヤ=ピラウスがいて、兄のようなサイがいて、姉のようなセシルがいた。お付きのシシーが、毎日髪をすいてくれるのが好きだった。庭を彩る花畑で遊ぶのが好きだった。眠れない夜には、みんなでいっしょに本を読んだ。
第2章 過去より、遣わされる者
4:牙
あの頃は、なにもかも幸せだった。
石造りの大きな宮廷で暮らし、優しい人々に囲まれて過ごした。母のようなレリス=パラウスやフライヤ=ピラウスがいて、兄のようなサイがいて、姉のようなセシルがいた。お付きのシシーが、毎日髪をすいてくれるのが好きだった。庭を彩る花畑で遊ぶのが好きだった。眠れない夜には、みんなでいっしょに本を読んだ。
満月が、雲の上に浮かぶ。眩しい月光を受けて、木々が影を作る。暖かい風が彼女の頬をなで、空高く流れる雲を優しくさらっていく。こんな暖かな夜は、兄を思い出す。兄は、夜のような人だ。どんな哀しくても辛くても、穏やかな眠りに付かせてくれるような、そんな静かな夜のような人。とても優しい人。大好きだった。
いつしか、レリスも亡くなり、フライヤも逝ってしまった。そして、サイとセシルがパラウスとピラウスになった。それでも、3人は兄妹だった。変わらぬ、優しい兄と姉だった。ずっと一緒だと思っていた。
その暮らしを、セシルが奪った。
あの日から、イルミナの世界は変わってしまった。イルミナは、永遠の闇を渡り歩かねばならなくなった。
だから――
「だから、あなたには死んでほしいの」
イルミナは、腰掛けていた太い木の枝の上に立ち上がった。
光があるから、闇がある。闇があるから、光がある。
忌々しい光が消えれば、私はこの絶望から逃れられる。
一陣の風が吹いて、木々がざわめいた。
木の葉を踏みしめる音が響く。
木々を縫って、緑色の長髪をなびかせた娘がひとり現れた。
* * *
街を離れ、歩いて1時間もないところだ。日はすっかり落ち、月がぽっかりと空高くに浮かんでいる。昼間と違って肌寒さを覚える。特に林のなかは冷え込んでいた。周囲に人家はない。静かなところだ。
一本の木を通り過ぎる前に足を止め、フィアは頭上を見上げた。背の高い木のひとつ、太い枝に、誰かがいる。黒い装束は夜闇に溶け込みそうだったが、その明るい緑の髪は、月光を受けて輝いていた。
相手の表情まで読み取ることはできなかった。目が合ったと思う。
次の瞬間、滑るように、少女が舞い降りてきた。フィアは右手を振った。手の内に、重い手ごたえが加わる。正面に向かって片手を振ると、甲高い金属音が鳴り響いた。言葉を交わすこともなく、二人の剣がかみ合う。
次の瞬間、滑るように、少女が舞い降りてきた。フィアは右手を振った。手の内に、重い手ごたえが加わる。正面に向かって片手を振ると、甲高い金属音が鳴り響いた。言葉を交わすこともなく、二人の剣がかみ合う。
イルミナが剣を跳ね上げた。ぶつかり合っていた刃が離れ、またかみ合う。二手、三手と、同じように金属音が鳴り響く。フィアには、イルミナの剣筋がよく見えた。防ぐことは容易い。相手の体力がそれほど続かないことも知っている。イルミナは、戦士でない。左右に揺さぶると、集中が途切れ、攻めが甘くなってきた。
その隙を、フィアは見逃さなかった。刃先をすべりこませ、彼女の剣に絡める。イルミナが、目を見張るのが見えた。そのまま体を寄せて、彼女の重心を抑え込む。
「このっ!」
イルミナは身をよじって離れようとしたが、フィアのほうが有利だ。
「訊きたいことがあるんだけど」
矢継ぎ早に言葉を重ねる。
「シルギルトアが死んでいたの…… なぜ?」
「死んだ?」
イルミナは驚いた表情を見せた。それも一瞬で、次の瞬間には鼻で笑ってみせた。
「龍は死なないわ」
「龍でも、器を失えば――」
「それが、死?」
イルミナが動きをとめた。抵抗をやめた――わけではない。呆気に取られた顔だった。
「死ぬってそういうことなの?」
イルミナの言葉の意味が、どういう意味なのか、フィアにはわからなかった。
少女の瞳に答えが映っているような気がして、その蒼い目を魅入ってしまう。
「ピラウスなのに、あなたの光は何を見ているの?」
勘付いたときには遅かった。
衝撃が走った。
足元から掬われた。宙を滑るように、弾き飛ばされる。
太い木の幹に背中から叩きつけられた。全身が痺れ、ずるずると地面に崩れ落ちる。身体が濡れたような感触がある。生臭い匂いが鼻についた。どこからか出血している。
頭がぼんやりする。脳震盪でもおこしたのか。
言霊のないまま、龍の力を放ったのだろう。
原理は暴発に近い。近距離では効果的だが、所詮無理なことだ。消耗が激しく、誰でも使えるわけではない。
――私でも上手く使いこなせなかった。
(そうか。あの人の……)
ああ、そうか。そうだった。
あの声は、フライヤ=ピラウスの声。
(……先生の)
戦う術と、生きる知恵を与えてくれた人。
強く猛々しい輝き。その光で、いつも私を導いてくれた。最後まで、私を護り抜いてくれた。
月が見えた。
闇にうがたれた穴のように浮かぶ、白。
――生きるんだ、セシル!!
途端に視界が冴える。フィアは起き上がった。身体を転がし、その場から大きく後退する。先ほどまでいた場所に、黒い影が刃のように突き刺さるのが見えた。
「しぶとい…っ!!」
イルミナの舌打ちが聴こえた。しかし、姿は見えない。
迫る不自然な風を感じて、頭を下げる。何かが頭上をすり抜け、背後の木々が割れる音がした。
折れた木が、背後から頭上に迫ってくる。
『ファランゾルン!』
左腕を、頭をかばうように掲げる。天高く白い光が昇り、すんでのところで木が消し飛ぶ。
白い光が、周囲を照らし出す。イルミナの姿が見えた。木上から狙い打ちをしていたのだ。
もう一度呪文を唱え、イルミナが乗っている枝を打ち落とす。彼女は口惜しげに、枝から跳んだ。
地面に落ちる前に、黒い影を放ってきたが、フィアは剣でなんなく打ち払った。
まだ視界がふらついていた。
フィアはその場に背を向け、林の中を駆け出した。
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女子らしからぬ壮絶バトルって自分でもどうかなとは思う。
つづく。
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