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今日締め切りだと思い完徹で仕上げたのに
別に月末で問題なかったという

降りしきる雨が冷たい…

11/10投稿分のつづき

CHILDREN OF GROUND
第1章 沈黙の森
3:最奥へ



「ねぇ、なんでフィアは《沈黙の石》を探してるの?」

 それは、ただそれだけの質問だっただろう。フィアを先頭に、ただ黙然と進むことに飽きたからの一言に過ぎないはずだ。

 しかしフィアは、わざわざ足を止めクノンを振り返った。方向を確認する素振りすら見せず、しっかりとした足取りで歩き続けていた彼女が。その視線は鋭く、クノンも、傍から見ていたカシスも思わず身を固くした。

「そんなこと聞いてどうするの?」
「べ、別に…なんでかなぁって。つい、好奇心で」

 顔の前で手を振り、苦笑いを浮かべながらクノンは口ごもった。

 フィアはじっとクノンを見据えていたが、もうクノンに追求する気がなさそうなのを見て取ると、体の向きを変えようとした。

「そんなに変な質問じゃねぇよな」

 彼女が完全に背を向ける前に、カシスはぽつんと言った。フィアは肩越しに振り返った。

「成り行きでも、今は組んでるんだ。何か知ってることがあれば、情報交換するのは普通だろ」

 とは言ったものの、実際カシスも気にはなっていた。なんだって彼女はこんな森に一人でのこのこ出てきたのだろう?

 考え事をするかのように、フィアは顔を背けて虚空を見つめていた。
 
 答えたくないのだろうか、とカシスが疑ったところで、彼女は顔をあげた。

「趣味よ」
「へ?」
 
 カシスが拍子抜けすると、彼女は微笑んで続けた。
「珍しいもの集めて、時にはそれを売って小遣い稼ぎにしてるの。《沈黙の石》については、私も大したことは知らないわ。噂に聞く程度しか」
 
 そして、肩をすくめた。クノンが面白がるように言った。

「なんかみんな似たような感じだね」
「そう?」

 フィアが聞き返した。

「うん。僕も、趣味みたいなものだし。一番《沈黙の石》が必要なのはカシスかな?」
「どうだろうな」

 あの情報屋は、別段《沈黙の石》が必要なわけではあるまい。今となって思えば、カシスをからかっただけなのだろう。となると、たとえ首尾よく《石》を手に入れても、カシスの欲しい情報が手に入るとは限らない。《石》そのものが高価であればいいのだが。

 それに、とカシスは考えた。たかがの趣味でこんな森に乗り込む娘がいるものか。フィアも何か目的があってここに来たはずだ…

「ねぇ」

 フィアが顔をあげた。

「もし《石》が見つかったとして、それが三人で分けられないものだったらどうするの?」
「それは――」

 答えかけて、カシスは黙った。嫌な想像膨らんで、顔が強張る。

「争奪戦でもやろうってのか?」
「嫌だよ、そんなの」

 クノンは本当に嫌そうだった。しかし本気で争えば、分が悪いのはカシスだ。たとえ破邪の剣とよばれいていようが、所詮剣術だ。魔法の威力にかなうわけが無い。
 
 クノンは代わりに、にっこりと笑って提案した。

「ジャンケンとか」
「阿呆か」

 言ってやると、クノンがむぅと膨れた。
 そのやり取りに軽く吹きだしながら、フィアがまとめた。

「分配については、見つけたときに穏便に考えたほうがよさそうね」

 その会話はそれで終わって。
 結局はぐらかされた、と気付いたときには、もう歩き始めてしばらく経っていた。

---------------------------------
つづく。
次は長いと思う。

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