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最近ネットの接続悪くて、更新のときとてもギリギリします (゜皿゜#)
CHILDRENOFGROUND
第4章 千年の森
5:
:
金の獣は、先導するように、つかず離れずカシス達の前方にいた。
第4章 千年の森
5:
:
金の獣は、先導するように、つかず離れずカシス達の前方にいた。
「確かに、誘っているようだな」
ハイルが言った。が、カシスもクノンも、答える余裕がなかった。
獣は、巨大な倒木を乗り越え、急な斜面を登り、かと思えば今度は転んだら確実に大けがをしそうな岩石混じりの傾斜をくだり、まさに山あり谷あり、普通なら迂回するルートをすべて乗り越えまっすぐ進んでいた。そのせいで、ふたりとも息があがっていた。
同じくハイルも息があがっているのだが、定期的なコメントを欠かさない。そういう律儀な性分なのだろう。
「ねぇ、この先にフィアがいなかったら?」
クノンが口を開く。その可能性はある。だが、議論したところで意味はない。ここまで来たからには、行って確かめるしかない。それからのことは、そのとき決めるしかない。
「そのときは、あの猫の腹かっさばいてみるか」
「冗談で聴いているんじゃないよ、僕は」
会話が不毛だと納得したのだろう。クノンは口をつぐむと、腐葉土に足を取られないようにゆっくりと斜面を降りた。
「こんな話を聴いたことがないか?」
斜面を降り切ったところで、ハイルがまた呟いた。無視しようかと思ったが、言い回しが気になって、カシスはハイルを見た。
「もってまわった言い方だな。なんだ?」
「お前、レンフという民族を知っているか?」
「は?」
「カフルは遠いからな。知らないか」
「名前なら聞いたことはある。西の海を越えた、エルファンゼルのあたりだろ?」
ここ何十年戦争もないおかげで、このあたりは豊かで穏やかなものだが、西の大陸はずっと紛争続きだという。そのせいか、身分差が激しい。特に、敗戦した国の人間はもはや人として扱われず、家畜同然の仕打ちだという。
なかでも、もっとも古くから虐げられている民族のひとつがレンフだ。
「で、レンフがなんだって?」
歩みを再開しながら、カシスは聴いた。うっかりしていると、獣を見失ってしまう。
「レンフ人の、言い伝えというか、神話だな。彼らの祖先は、捕虜として連れ去られる前、聖なる森に暮らす民族だったらしい」
「ああ、知ってる、その話」
クノンが口を挟んだ。
「西からきた学者から聴いたことあるよ。レンフ人の言い伝えの中に、不死の力を秘めた泉があるとか。旧アグナス帝国の遠征の真の目的は、その泉をみつけて不死身の力を手に入れるためだったって」
「そういう歴史マニアの話じゃなくてな」
話を持っていかれて、言い出しにくくなったのか、少し口ごもってからハイルは続けた。
「彼らの伝承なんだが、レンフは、樹から生まれた、精霊のような存在だったらしい。樹を護り、樹を育むため、森を守る存在だったと」
「で?」
カシスは適当に相槌を打って話を促した。話はもう半分も聴いてなかった。時々木に隠れて、獣の姿が見えなくなるのが心配だった。
「森の守護者であるレンフは、森そのものであって、森に棲む多くの生き物とその身をひとつにすることができたらしい」
「ひとつに?」
「まぁ、動物を使役できたということだろう」
詳しくは知らないのか、ハイルはそれだけ言った。
神話や伝承など、そんなものだ。
「……で?」
カシスはもう一度聴いた。
「いや、レンフの言い伝えのようだと思ってな」
「何が?」
「あの猫だ。まるで、森の精霊のようじゃないか。迷い込んだ人間を、どこかに連れて行こうとしている。案内されるのは、仲間のところではなく、森の出口かもしれん」
たぶん、ハイルが言いたかったのはそれだけだろう。
森の精霊。
魔法使いは、なぜかそういう目に見えない不思議な物事についてばかり語りたがる。日頃から不思議な力を操っているせいだろうが。
(でも、龍は実在した)
あるはずがないと思ったことが起こる。
美しい伝承を持つレンフが、今は抑圧されて生きているように。
魔法のような奇跡も、凄惨な悲劇も、平等に起こりうるのだとしたら。
「…… 笑えねぇな」
胸に湧いた影をかき消すつもりで毒づいたが、その言葉は、魔法のように不安を掻き消してはくれなかった。
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カシスの出身のカフルは、もっとずっと南のほうの山奥。ど田舎。
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