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今週はがんばってアップする。
いつもそう言ってる気がする。
CHILDRENOFGROUND
第4章 千年の森
4:
カシスは目を凝らした。隣で同じく様子をうかがっているハイルがぼそりとつぶやく。
「虎か豹のように見えるが」
木の幹に隠れながら様子をうかがう。現れた獣は、きれいな毛色をしていた。金色の毛並は、ただならぬ存在であるように、怪しくきらめいている。
魔物は、動物とは違って尋常でない力を秘めている。ただの犬でも人間をはるかに上回る力を持っているが、そういう意味ではない。極端にいうと、ファカルティを駆使する、ということだ。
クノンがもっともなことを指摘した。三人は、謎の金色の獣に悟られない程度に距離を詰めて、獣の様子を観察していた。
クノンの言いたいことはわかる。近くに仲間の群れがいるとしたら、やはりここは危険だ。速やかに離れるべきだろう。
(まだフィアが戻ってないってのに)
獣から目を離す。無理な姿勢が疲れてきたので、首を引っ込め、その頭を木に預ける。
このまま、あいつが戻らなかったら、どうする?
案外、捨て置かれたのかもしれない。そのまま村まで飛んで行ったのかもしれない。それなら、それで構わない。見つけたらただでは済まさないが。
だが、もし、何かあったとしたら?
「まずい、カシス!」
クノンの慌てた声にはっとする。顔を上げるとクノンが杖を構えようとしていた。ハイルがひきつった表情を浮かべている。
その一瞬が、絵のように切り取られ固まっているように見えた。
(え?)
カシスは、二人の視線を追いかけようとした。その先から、ひどく素早いものが飛び込んできた。それはクノンの頭を踏み、ハイルの背中を蹴るとカシスに飛びかかってきた。
カシスにできたのは、首をかばうことだった。
樹の幹にたたきつけられて、カシスは苦痛の声をあげた。爪が、肩に食い込む。眼前に迫った獣の顔がカシスの両手の先で、ギラリと牙を剥いた。
近づいていたとはいえ、30メートルはあった。それを一瞬で詰め、襲いかかってきたのだ、この金色の獣は!
( くそが……!!)
だがそこで、カシスは違和感を覚えた。獣は噛みついてくるわけでもなく、カシスの手を振り払うわけでもない。剥いた牙に、何かがひっかかっている――
「おい、それ……」
カシスは腕を伸ばして、見つけたものを手の中に収めた。
「カシス!」
起き上がったクノンが叫んだ。
それと同時に、獣が離れる。頭を巡らせて、金色の姿を見かけたときには、もう獣は木々の間の中だった。
『槍を持て、審判の時が――』
クノンの詠唱をカシスは遮った。
その間にも、獣は、とことこと森の奥に去っていく。
「大丈夫? カシス」
ハイルの姿が見えない、と思ったら、打ちどころが悪かったのだろう、やっと起き上がってきたところだった。
「なんだったんだ? 襲ってきたかと思えば」
クノンが素頓狂な声をあげた。
「追う? あの猫を?」
カシスは立ちあがって、体についた泥を落とした。
「理由が聞きたいね」
ハイルも、突然の提案に戸惑っているようだった。
「そのままだ。あの猫は、フィアとどっかで会ってる」
クノンがますます混乱した様子で眉根を寄せている。
「『そんな気がするから』とか言わないでね、カシス」
あきれたような、困ったような声をあげて、クノンが肩を落とす。
「だからな、俺があいつにやったお守りを、あの猫が咥えてるのが見えたんだよ」
カシスは手を開いた。あの獣の牙に引っかかっていたのは、フィアが首から下げているはずの、赤い実のお守りだった。いまカシスの手のひらにあるものは、間違いなく彼女のものだ。
「なになに? もう一回言ってほしいな」
少し別の見方をすると、フィアは、たとえ身の回りの物を奪われても取り返すほどの余裕がない状況にいるのかもしれない。あの金色の獣も、意味ありげな行動だった。なんにせよ、良い予感はしない。
「そこはわかるよ。そうじゃなくて、前半部分の詳細な説明がほしいんだけど」
こんな状況にも拘らず、クノンの金色の双眸が妙に輝いている。
カシスは何も言わず、握った左拳を垂直にクノンの頭頂に落とした。
ごっ、と鈍い音が響いて、クノンがうずくまった。
「いっ……たいなぁ!」
クノンを見下ろしていると、ふと異様な視線を感じる。振り向くと、放心状態のハイルが立っていた。
「こんな下郎が…… なんということを……」
これ以上ハイルに何か言われると面倒だ。カシスは金色の獣が去った方向を示すと声を荒げた。
これで、オルトワに近づけない理由がひとつ増えた。
---------------------------------------
クノンは結構恋バナ好きだと思う。
利き手で殴らないのは、カシスの愛情。うすっぺらいけども。
第4章 千年の森
4:
「なんだ、あれ。魔物か?」
カシスは目を凝らした。隣で同じく様子をうかがっているハイルがぼそりとつぶやく。
「虎か豹のように見えるが」
「その中間ぐらいに見えるから、怪しんでるんだろ」
木の幹に隠れながら様子をうかがう。現れた獣は、きれいな毛色をしていた。金色の毛並は、ただならぬ存在であるように、怪しくきらめいている。
魔物は、動物とは違って尋常でない力を秘めている。ただの犬でも人間をはるかに上回る力を持っているが、そういう意味ではない。極端にいうと、ファカルティを駆使する、ということだ。
「魔物にせよそうでないにしろ、一匹なんて珍しいね」
クノンがもっともなことを指摘した。三人は、謎の金色の獣に悟られない程度に距離を詰めて、獣の様子を観察していた。
クノンの言いたいことはわかる。近くに仲間の群れがいるとしたら、やはりここは危険だ。速やかに離れるべきだろう。
(まだフィアが戻ってないってのに)
獣から目を離す。無理な姿勢が疲れてきたので、首を引っ込め、その頭を木に預ける。
このまま、あいつが戻らなかったら、どうする?
案外、捨て置かれたのかもしれない。そのまま村まで飛んで行ったのかもしれない。それなら、それで構わない。見つけたらただでは済まさないが。
だが、もし、何かあったとしたら?
「まずい、カシス!」
クノンの慌てた声にはっとする。顔を上げるとクノンが杖を構えようとしていた。ハイルがひきつった表情を浮かべている。
その一瞬が、絵のように切り取られ固まっているように見えた。
(え?)
カシスは、二人の視線を追いかけようとした。その先から、ひどく素早いものが飛び込んできた。それはクノンの頭を踏み、ハイルの背中を蹴るとカシスに飛びかかってきた。
カシスにできたのは、首をかばうことだった。
樹の幹にたたきつけられて、カシスは苦痛の声をあげた。爪が、肩に食い込む。眼前に迫った獣の顔がカシスの両手の先で、ギラリと牙を剥いた。
近づいていたとはいえ、30メートルはあった。それを一瞬で詰め、襲いかかってきたのだ、この金色の獣は!
( くそが……!!)
だがそこで、カシスは違和感を覚えた。獣は噛みついてくるわけでもなく、カシスの手を振り払うわけでもない。剥いた牙に、何かがひっかかっている――
「おい、それ……」
カシスは腕を伸ばして、見つけたものを手の中に収めた。
「カシス!」
起き上がったクノンが叫んだ。
それと同時に、獣が離れる。頭を巡らせて、金色の姿を見かけたときには、もう獣は木々の間の中だった。
『槍を持て、審判の時が――』
「よせ」
クノンの詠唱をカシスは遮った。
その間にも、獣は、とことこと森の奥に去っていく。
「大丈夫? カシス」
「お前こそ、額のところ、泥だらけだぞ」
ハイルの姿が見えない、と思ったら、打ちどころが悪かったのだろう、やっと起き上がってきたところだった。
「なんだったんだ? 襲ってきたかと思えば」
「追うぞ」
「えっ?」
クノンが素頓狂な声をあげた。
「追う? あの猫を?」
「ああ」
カシスは立ちあがって、体についた泥を落とした。
「理由が聞きたいね」
「あいつ、フィアの居場所を知ってる」
「言っている意味がよくわからんが?」
ハイルも、突然の提案に戸惑っているようだった。
「そのままだ。あの猫は、フィアとどっかで会ってる」
「だからさ、なんでそれがわかるんだい?」
クノンがますます混乱した様子で眉根を寄せている。
「『そんな気がするから』とか言わないでね、カシス」
「ま、そんなところだ」
「もー」
あきれたような、困ったような声をあげて、クノンが肩を落とす。
「だからな、俺があいつにやったお守りを、あの猫が咥えてるのが見えたんだよ」
「え? え?」
カシスは手を開いた。あの獣の牙に引っかかっていたのは、フィアが首から下げているはずの、赤い実のお守りだった。いまカシスの手のひらにあるものは、間違いなく彼女のものだ。
「なになに? もう一回言ってほしいな」
「あの馬鹿の持ち物を、あの猫が持ってた。何があったかしらんが、接触したのは間違いねぇだろ。だから、あの猫を追っかけてたら、フィアが見つかるんじゃねぇか」
少し別の見方をすると、フィアは、たとえ身の回りの物を奪われても取り返すほどの余裕がない状況にいるのかもしれない。あの金色の獣も、意味ありげな行動だった。なんにせよ、良い予感はしない。
「そこはわかるよ。そうじゃなくて、前半部分の詳細な説明がほしいんだけど」
こんな状況にも拘らず、クノンの金色の双眸が妙に輝いている。
カシスは何も言わず、握った左拳を垂直にクノンの頭頂に落とした。
ごっ、と鈍い音が響いて、クノンがうずくまった。
「いっ……たいなぁ!」
「うっせ。生意気なガキにはちょうどいいだろうが」
クノンを見下ろしていると、ふと異様な視線を感じる。振り向くと、放心状態のハイルが立っていた。
「こんな下郎が…… なんということを……」
「やかましい! グダグダ言うな! いいからあの猫追っかけるぞ!」
これ以上ハイルに何か言われると面倒だ。カシスは金色の獣が去った方向を示すと声を荒げた。
これで、オルトワに近づけない理由がひとつ増えた。
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クノンは結構恋バナ好きだと思う。
利き手で殴らないのは、カシスの愛情。うすっぺらいけども。
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