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今月中に書き上げるのは難しいかな!
しばらく更新停滞です。
5月中旬には復帰するつもりです。
戻ってきたら、またよろしくお願いします。
虫が嫌いな人は、閲覧注意。
CHIlLDRENOFGROUND
第4章: 千年の森
:
「なんで、こんなときに!」
クノンの焦った声が聴こえた。カシスもまったくの同意見だった。
光沢のある外殻。長い六本脚の、前足だけに大きな鎌がついている。
メンティスと言って、平たく言えば、巨大カマキリだ。救いなのは、あまりに胴体が重いので、カマキリほどすばしっこくはないし、飛ぶことはない。鎌を掲げ、伺うように小首を傾げ、こちらとの距離を見ている。
「なんだ、クノン。カマキリ平気なのか? あんなに嫌いだったろう?」
ハイルも腰から短剣のようなものを取り出し、軽く一振りした。一瞬で柄が伸び、先ほど見た短槍になった。
ハイルの一言に、珍しくクノンが歯噛みしていた。
「余計なこと言わないでよ、ハイル! あと、僕が嫌いなのはカマキリの卵の子供が孵ったばかりでウゾウゾしているアレが ―― ああもう!」
嫌そうに少年が頭を振った。確かに、場違いなハイルの発言は不快だが、これだけクノンが取り乱すのも珍しい。
おかげでカシスは返って冷静に状況を判断できた。
「クノン、先に行け。あの猫を追っかけろ」
「何を――」
四の五の言っている場合ではなかった。もう、あの金の猫の姿は見えない。腹の底から力を込めて、言い切った。
「いいから、フィアを見つけだせ! そんでちゃんと謝ってこい!」
カシスは飛び出した。抜剣とともに、クノンを狙っていたメンティスの鎌を払う。
態勢を崩されたメンティスは、驚いて動きを止めている。メンティスの巨大な鎌は、捕まればひとたまりもないが、この巨大カマキリ自身の動きは機敏ではない。
「行け。お前が適任だ。わかるだろが」
ハイルではフィアがわからないし、魔法が使えないカシスに単独行動は不向きだ。
そう言えばいつまでもごねるクノンではない。最後まで訊くこともなく、クノンは駆けだしていた。
それを見つけたメンティスが少年の後を目で追っている。ハイルの詠唱が完成して、メンティスの鼻先で小規模な爆発が起きる。目くらましだ。その隙に、クノンは魔物の横を駆け抜けた。
ハイルが単発の魔法で注意を引いているうちに、カシスはメンティスの背後に回った。
足さえ切り落としてしまえば、この魔物はそれほど脅威ではない。だが外皮は尋常でなく固く、角度によっては魔法の刃でさえはじかれることもある。後足の関節の裏を狙うのがいい。
そのとき、カシスは視界が陰るのを感じた。
「カシス! 上だ!」
ハイルの警告が響く。
遅かったと言えばそうかもしれない。上に居た何かは、一瞬でこちらに押し寄せてきたが、紙一重で、カシスの眼前をよぎる。
瞬きするほどの一瞬だ。目の前にいたはずのメンティスがいない。
背後で、メキメキと嫌な音がして、カシスは振り返った。
いたのは、あの巨大カマキリではなかった。メンティスほどは大きい。
大蛇だ。紫のまだら模様。満足げに、身をくねらせている。
(メンティスを…… 呑んだのか?)
あまり深くは考えたくない。
蛇と目があった。
カシスは前に出た。同時に飛び込んできた蛇の脇を滑りぬける。
斬るつもりで振った剣だが、蛇の鱗の上を引っ掻いただけだった。
素早く身をひるがえすと、ハイルの魔法が発動していた。大きな雷光が蛇を襲う。
蛇が跳ねあがり、のたうち始めた。危うく尻尾に叩きつぶされそうになったが、退いて様子を見る。
怒った蛇が鎌首をもたげ、甲高い威嚇の声をあげる。
とどめには至らなかった。蛇の魔物には魔法に耐性がある種が多い。この大蛇もそうだろう。
蛇は迷わずカシスに向かってきた。
間合いを読んで、カシスは剣を突き上げた。狙いは顎の下。
蛇の勢いが速いのも相まってか、やはり硬い鱗に剣先がはじかれた。勢い余ってその場を跳びのく。振り返るのは、蛇のほうが速かった。蛇の無機質な双眸が、カシスを見ている。
重い痺れが手に残っている。カシスは剣を振りかぶった。
飛び掛かってくるとわかっていれば、無駄に動く必要もない。腰を落とし、腹の位置で剣を構え、突きの姿勢で待つ。
蛇が不規則な軌道を描いた。
吐く息とともに、剣を突き出す。
突き出した剣が、蛇の右目に刺さった。
だが、目を刺されても、蛇は動きを止めなかった。咆哮をあげ、頭を振り、カシスの手から剣が離れる。
(まずい ――)
その場を離れようとして、身をよじる。だが間に合わない。
魔物の牙がカシスの左肩を捉えた。
ちょうど、娼館で負傷した箇所だ。まだ完治していない部分に、狙ったかのように食い込む。異物が侵入する激痛に、カシスは絶叫した。
たまらず足をつく。そのとき、激しい衝突音とともに、肩にかかる魔物の重みが消える。ハイルの魔法が、魔物を弾き飛ばしたようだ。幸い、肩が食いちぎられることはなかった。
歯を食いしばって立ち上がろうとして―― 立ち上がれなかった。
不意に睡魔が襲ってきた。膝から崩れ落ちる。
身体がわなないた。寝ていて、動けないはずなのに、視界が回る。高熱に浮かされたときのような、不快感が全身に広がる。
(…… 毒?)
失血ではないだろう。それ以上は何も考えられず、カシスの意識は暗くなった。
------------------------------------------
あのうぞうぞはトラウマものだよね ……
第4章: 千年の森
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「なんで、こんなときに!」
クノンの焦った声が聴こえた。カシスもまったくの同意見だった。
光沢のある外殻。長い六本脚の、前足だけに大きな鎌がついている。
メンティスと言って、平たく言えば、巨大カマキリだ。救いなのは、あまりに胴体が重いので、カマキリほどすばしっこくはないし、飛ぶことはない。鎌を掲げ、伺うように小首を傾げ、こちらとの距離を見ている。
「なんだ、クノン。カマキリ平気なのか? あんなに嫌いだったろう?」
ハイルも腰から短剣のようなものを取り出し、軽く一振りした。一瞬で柄が伸び、先ほど見た短槍になった。
ハイルの一言に、珍しくクノンが歯噛みしていた。
「余計なこと言わないでよ、ハイル! あと、僕が嫌いなのはカマキリの卵の子供が孵ったばかりでウゾウゾしているアレが ―― ああもう!」
嫌そうに少年が頭を振った。確かに、場違いなハイルの発言は不快だが、これだけクノンが取り乱すのも珍しい。
おかげでカシスは返って冷静に状況を判断できた。
「クノン、先に行け。あの猫を追っかけろ」
「何を――」
四の五の言っている場合ではなかった。もう、あの金の猫の姿は見えない。腹の底から力を込めて、言い切った。
「いいから、フィアを見つけだせ! そんでちゃんと謝ってこい!」
カシスは飛び出した。抜剣とともに、クノンを狙っていたメンティスの鎌を払う。
態勢を崩されたメンティスは、驚いて動きを止めている。メンティスの巨大な鎌は、捕まればひとたまりもないが、この巨大カマキリ自身の動きは機敏ではない。
「行け。お前が適任だ。わかるだろが」
ハイルではフィアがわからないし、魔法が使えないカシスに単独行動は不向きだ。
そう言えばいつまでもごねるクノンではない。最後まで訊くこともなく、クノンは駆けだしていた。
それを見つけたメンティスが少年の後を目で追っている。ハイルの詠唱が完成して、メンティスの鼻先で小規模な爆発が起きる。目くらましだ。その隙に、クノンは魔物の横を駆け抜けた。
ハイルが単発の魔法で注意を引いているうちに、カシスはメンティスの背後に回った。
足さえ切り落としてしまえば、この魔物はそれほど脅威ではない。だが外皮は尋常でなく固く、角度によっては魔法の刃でさえはじかれることもある。後足の関節の裏を狙うのがいい。
そのとき、カシスは視界が陰るのを感じた。
「カシス! 上だ!」
ハイルの警告が響く。
遅かったと言えばそうかもしれない。上に居た何かは、一瞬でこちらに押し寄せてきたが、紙一重で、カシスの眼前をよぎる。
瞬きするほどの一瞬だ。目の前にいたはずのメンティスがいない。
背後で、メキメキと嫌な音がして、カシスは振り返った。
いたのは、あの巨大カマキリではなかった。メンティスほどは大きい。
大蛇だ。紫のまだら模様。満足げに、身をくねらせている。
(メンティスを…… 呑んだのか?)
あまり深くは考えたくない。
蛇と目があった。
カシスは前に出た。同時に飛び込んできた蛇の脇を滑りぬける。
斬るつもりで振った剣だが、蛇の鱗の上を引っ掻いただけだった。
素早く身をひるがえすと、ハイルの魔法が発動していた。大きな雷光が蛇を襲う。
蛇が跳ねあがり、のたうち始めた。危うく尻尾に叩きつぶされそうになったが、退いて様子を見る。
怒った蛇が鎌首をもたげ、甲高い威嚇の声をあげる。
とどめには至らなかった。蛇の魔物には魔法に耐性がある種が多い。この大蛇もそうだろう。
蛇は迷わずカシスに向かってきた。
間合いを読んで、カシスは剣を突き上げた。狙いは顎の下。
蛇の勢いが速いのも相まってか、やはり硬い鱗に剣先がはじかれた。勢い余ってその場を跳びのく。振り返るのは、蛇のほうが速かった。蛇の無機質な双眸が、カシスを見ている。
重い痺れが手に残っている。カシスは剣を振りかぶった。
飛び掛かってくるとわかっていれば、無駄に動く必要もない。腰を落とし、腹の位置で剣を構え、突きの姿勢で待つ。
蛇が不規則な軌道を描いた。
吐く息とともに、剣を突き出す。
突き出した剣が、蛇の右目に刺さった。
だが、目を刺されても、蛇は動きを止めなかった。咆哮をあげ、頭を振り、カシスの手から剣が離れる。
(まずい ――)
その場を離れようとして、身をよじる。だが間に合わない。
魔物の牙がカシスの左肩を捉えた。
ちょうど、娼館で負傷した箇所だ。まだ完治していない部分に、狙ったかのように食い込む。異物が侵入する激痛に、カシスは絶叫した。
たまらず足をつく。そのとき、激しい衝突音とともに、肩にかかる魔物の重みが消える。ハイルの魔法が、魔物を弾き飛ばしたようだ。幸い、肩が食いちぎられることはなかった。
歯を食いしばって立ち上がろうとして―― 立ち上がれなかった。
不意に睡魔が襲ってきた。膝から崩れ落ちる。
身体がわなないた。寝ていて、動けないはずなのに、視界が回る。高熱に浮かされたときのような、不快感が全身に広がる。
(…… 毒?)
失血ではないだろう。それ以上は何も考えられず、カシスの意識は暗くなった。
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あのうぞうぞはトラウマものだよね ……
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