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ひさびさ更新。
でもたぶんまたしばらくは書けないかな。
3月中にもうちょっと更新したいけど、予定は未定…
02/16投稿分のつづき。
でもたぶんまたしばらくは書けないかな。
3月中にもうちょっと更新したいけど、予定は未定…
02/16投稿分のつづき。
CHILDREN OF GROUND
第3章 山上の宴唄
4:よっつ よばれて よあきんど
書斎かな、と本棚の多い部屋を見回してクノンは納得した。
第3章 山上の宴唄
4:よっつ よばれて よあきんど
書斎かな、と本棚の多い部屋を見回してクノンは納得した。
いや、書斎にしては、ちょっと広いかもしれない。ここは個人の邸宅ではないはずだから、執務室かもしれない。大きな紫檀の書斎机の前に、同じく紫檀のソファが2つ、ひくいテーブルを挟んで向かいあって並んでいる。地下の酒場に比べれば、圧倒的に装飾は少なく、無機質な印象がある。ベージュの壁紙は清潔なイメージがあるが、華やかさに欠ける。応接間にしては、堅い。
(少人数で、秘密の話し合いをするにはちょうどいいかな)
ふかふかのソファに腰かけて、クノンは正面の男をみやった。立派な身なりをした初老の男だ。痩せた体に、ネイビーのスーツを身に纏っている。生地は上等そうだ。清潔な印象はあるが、丁寧に撫で付けた薄い頭髪や、袖から覗く金鎖の腕時計は、クノンの趣味ではなかった。
「ここのワインは、口に召しますでしょうか?」
「ええ。とても」
男の言葉に、クノンはワイングラスをくゆらせた。
「オルトワ産とは、一味違うでしょう?」
「そうですね。香りはとても良いのですが――」
グラスを静かにテーブルに戻す。空いた手を体の前で組んだ。
「僕には、ちょっとクセが強いようです。オルトワの甘さに慣れすぎてしまったのかも」
本当はワインなんてそんなに飲んだことないけれど。でもアカデミー卒業のお祝いに、少しだけ飲んだあのワインはとても美味しかった。海に面したオルトワ地方は、決してワインに適した気候ではないけれど、職人が長年かけてつくりだしたあの独特の甘い風味は名産品のひとつに挙げられる。
「わが娼館にようこそ、クノン様」
「歓迎、痛みいります」
微笑みとともに言葉を返す。男は笑いかえしてくれなかった。とはいえ、相手が単に談笑するつもりで自分を呼び込んだわけでないくらいわかっている。
「よもや、カストマイダー卿のご子息にこのような場所でお遭いできるとは」
「僕も、男爵に呼び止められたときは驚きました。ご高名はかねがね伺っております」
「まあ、あなた方と違って悪名ですがね」
なかなか辛口だ。リオルト家はたしかに嫌な噂が絶えないけれど。
クノンは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「今日は? おひとりですか、クノン様」
「はは、野暮なことを。大勢で来るような場所でもないでしょう」
男爵は、ワインをすすった。グラスが空になった。
「注ぎましょうか」
ワインセラーからボトルを取り出す。
父が見たらなんというだろう。リオルト男爵と飲み交わしたと聴いたら。少なくともいい顔はしないのではないか。公になった事件はないが、リオルト家は薄暗い噂が多い。不正や殺人の事件には、必ずリオルト家の影がある。できれば知り合いになりたくない人種だ。
満たされた杯に、男爵がまた口をつける。
「そういえば、ご成婚なされたとか」
クノンは面食らった。さすがに、この手の話題がくるとは思わなかった。
「何か、聞き違いでは? 僕は未婚ですよ」
「はて、コーフォリア公爵のご息女があなたの家に住むようになって1年は経つかと思いますが?」
そういえば、リオルト家はコーフォリア家と縁があったような。しかし、クノンが覚えてない程度だ。すごく遠い親戚の親戚とか、その程度だろう。
“彼女”の話が、なぜ男爵の口から?
「式はまだ挙げていません」
「婚約は?」
「していますが…… まぁ、僕も家業を継ぐには未熟ですし。腰を落ちつける前に世の中を見て回ってもいいかと思いまして」
「はぁ、世間知を学ぶために、旅を」
男爵が感心した様子で深くソファにもたれかかった。
男爵が感心した様子で深くソファにもたれかかった。
「すばらしい。頼もしい限りだ。私の息子どもに見習わせたいぐらいだ」
「そんな、とんでもないです」
クノンは微笑んで、ワインを口に運んだ。
男爵は、少し首を傾げると、低い声で言った。
「それは建前で、嫡男であるあなたが、家業を継げない理由がある……というわけではないのですか?」
伺うような目つきだった。その目をみて、クノンは2つ納得した。
男爵の目的は、わが家の弱みを掴みたいということ。
もうひとつ、それは自分にとって、とるにたらない問題であること。
(……僕を叩いても何もでてきませんよ)
クノンは心の中で呟くと、グラスを置いた。
「リオルト男爵……」
「や、これは不躾でしたな。失礼」
さも触れてはいけないことに触れたように、男爵は言葉を濁した。
そのとき、部屋のドアがノックされる音が響いた。
面倒なことに巻き込まれたかな、とクノンはそのときに嫌な予感がした。
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童顔知的クール。それがクノン。
そんなクノンが大好き。
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