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さあ、忙しい1週間の幕開けだぜ
それでも小説は書きたい年内に2章終わらせたい

12/11投稿分のつづき
流血は削った。

CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より、遣わされる者

3:月夜に語られる

 この世のはじまりに
 一頭の竜がいらっしゃいました
 二頭の龍は
 竜から分かれ出た者たちです
 つまり、浩龍と昏龍です
 
 二頭の龍は
 たがいに異なるものであったので
 永い争いを始めました
 この世のほとんどは
 灰になりました
 
 竜は
 大変お嘆きになって
 浩龍を浩々たる空隙に
 昏龍を暗澹たる間隙に
 封印されてしまいました
 
 そして
 その大いなる御業をもって
 灰の中からこの世を癒し
 四頭の龍をおあたえになりました
 つまり、嵐龍、坤龍、沃龍、焔龍です
 
 最後に
 龍の民をお創りになったあとに
 時の狭間、門の手前において
 御疲れになった竜は
 永い眠りにつかれたのです

      *  *  *
 
 かつて、ある種族が存在した。
 
 その姿は、人にとても似ていたが、人にはない力を持っていた。
 
 それは龍の力であり、龍の眷属として授かったその力は絶大だった。
 
 彼らは絶海の孤島に住み、何者も寄せ付けず、ただ静かに暮らしていた。
 
      *  *  *

 龍族には古い言い伝えがあった。

 世界には、はじめ、一頭のドラゴンしかいなかった。そのドラゴンを、彼らは《始まりの竜》と呼び、父祖として崇拝した。四頭の龍は、竜の眷属であり、龍族にとっては父を同じくする兄弟であると同時に、やはり信仰の対象であった。
 
 龍族は、竜とその眷属から恩恵を授かった。恩恵は力として彼らに宿った。その証は身に刻まれ、龍族は必ず右腕に痣を持って生まれた。その痣の形は、《始まりの竜》を表わしているという。

 その痣を左腕に持って生まれる者もいた。その者は“使い”とされた。

 左腕に痣を持つ者は必ず、浩龍あるいは昏龍の力を宿しており、即ち浩龍と昏龍の使いなのである。

 伝承にある使いのくだりを紐解けば、彼らは“永き争い”の中で折れた龍の牙の化身である。浩龍の使いの名を「ピラウス」、昏龍の使いの名を「パラウス」といい、ピラウスは万の武芸に秀で、パラウスは万の知識を備えていた。

 ふたりは龍族を訪れ、龍族の長《司祭》に忠誠を誓う。そして龍族を導き、治めることになる。使い亡き後も、ピラウスとパラウスの力は、龍族のなかで継承されていく。ピラウスの力を継ぐ者が《戦龍神》として、パラウスの力を継ぐ者が《賢龍神》として、二部に分かれて一族を統率した。 

 龍族が滅んだのは千年前。
 滅ぼしたのは、一族の守り手であるはずの《戦龍神》。

      *  *  *
 
 石造りの宮廷は、早朝はとても肌寒い。足音もいつもより甲高く冷たく響く。
 
 黒の軍服と、宮廷最高位を示す紺の直垂に身を包んだセシルは、付き人もなくただひとりで、寒さに急かされるように広い廊下を歩いていた。

 誰も連れていないのは、単に私用だからだ。ピラウスとしてではなく、友人として呼ばれたのだ。そのあとは、どうせすぐ公務につくわけであって、いちいち着替えに戻るのも面倒なので軍服を着てきただけだ。

(何もこんなに早くから……)

 サイとは気心しれた仲だ。多少無理を言われても悪い気はしない。それでも、ついさっき夜が明けたばかりだ。それに、

(どうして“誓いの間”なんだ?)

 出入りは容易い。宮廷で3番目に広い部屋で、よく文部が話し合いに使っている。だが、わざわざふたりで話すような場でもない。それなら、個室を使ったほうがまだいい。

 セシルは、廊下の突き当りを右に折れた。その先が、誓いの間だ。大きな両開きの戸がそびえている。

(まぁ、話しを訊けばわかることか)

 そして、扉を開けた。
 
      *  *  *
 
 セシル=ピラウスは、齢20で《戦龍神》を継承した。彼女と同代の《賢龍神》がサイ=パラウスである。そして次期《賢龍神》がイルミナであった。

 継承者は、赤子のうちに保護される。共に宮廷で暮らした彼らは、立場とは関係なく友であり、家族だった。
 
      *  *  *
 
 「姉様?」

 驚いて入り口に目を向ける。円卓の先の開いた扉に、目を見開いた少女がいた。いつも紅潮した美しい頬が青白くひきつっているのは、寒さのせいか、それとも流された血の匂いを嗅ぎ取ったからか。

「何を――」

 部屋の中ほどまで入ってきて、やっと倒れた兄の姿に気づいたのだろう。悲鳴をあげて駆け寄ってきた。

「兄様、兄様っ」

 震える声が、事切れた遺体にすがる仕草が、こぼれる涙が、今目の前に広がる光景が現実であることを訴えかけていた。それまで、全てがまるで夢のように感じられていた。どこか感覚が麻痺していたのだろう。深く吸い込んだ冷気が、脳を冴えさせる。

 サイは死んだ。幕が開けたのだ。

 セシルは、腰の軍刀に手を添えた。《戦龍神》だけが佩くことを許される、浩龍の力を宿した白刃。

「どうしてなの、姉様―― どうして兄様が」

 セシルは、剣を抜いた。 
 
      *  *  *
 
 セシルが《戦龍神》を継承して4年後、彼女はサイ=パラウスを殺害し、多くの同胞の命をうばった。
 
 龍族の島は、一夜に消滅した。

 それでも龍族の全てが途絶えたわけではなく、ピラウスの力は地に留まり、長い時間をかけて甦った。

 フィアという名前の器を得て――

 
 
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出だしは神話の現代語訳っぽくしようとしてなんか残念な感じ。
全部残念な感じとかいっちゃダメ。
つづけー
 

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