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秋田BOX買いました!
まだエンハウしか読んでないけど^^
もうミズー姐さんがかわいくてかわいくてvvv
ギーアもかわいいvvv 悔しそうなところかわゆすvvv
キュンキュンしっぱなしですvvv
12/21投稿文のつづき。
CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より 遣わされる者
4:牙
:
龍の島は、魔物をひきつける何かがあるのかもしれない。海を越えて、時折魔物の群が襲い掛かることがある。魔物から村を護るのが、軍部の役割だ。兵士として、誰かの盾となり剣となれることを、彼女は誇りに思っていた。
しかし、やっと一人前として扱われるようになったというのに、この様では先が思いやられる。
「どうした? その腕」
前方で、師が同じように風に吹かれていた。彼女の視線から右腕が隠れるように、体の向きを変える。
腕は、少し皮が持っていかれただけで、骨まで響いていない。見た目の出血ほど深い傷ではないのに、気遣われるのは嫌だった。いつもより甲冑が重く感じられる。少し血が足りないのかもしれない。
水平線に沈みかけた斜陽が、眩しい。澄み渡る海を、戦で流された魔獣の血さえも、すべて暖かな光に染め上げられている。
「早めに衛生班のところにゆけ。化膿するぞ」
言い残して、踵を返した。浩龍の力を宿しているのだ。それぐらい、自分にだってできる。
「まて」
振り返ると、思いのほか近くに師が立っていた。
「光で自分の傷を治す? 本気か?」
次の瞬間、脳天に硬いものが突き刺さった。
ごん、と鈍い音が走る。
油断していた。目の前を火花が散る。
それが拳骨だと気づいたのは、じわりと痛みが熱を帯びてからだった。
「何を……」
言葉より先に手が出るのは、師の悪い癖だと思う。いい歳をして、言葉遣いが荒いところも。
ピラウスなのに。
「もしものときだけにしとけ。あまり続けていると、おかしくなる」
風が吹いて、師の髪が揺れる。前髪の奥に隠された、眼帯が目に入る。戦場で失ったとしか、聞き及んでいない。残された左の黒瞳は、真剣さを帯びていた。
「身体機能が低下する場合があるんですか?」
免疫力が下がるのだろうか、と考えたところに、もう一度拳骨が入った。
鍛え抜かれた硬い拳だ。何度も同じ場所にもらうのは堪える。
「……先生、あの、傷に響くのでやめてください」
不機嫌そうに、師が背を向けた。紺の軍衣が翻った。
「……お前の心が、だ。言わせるな、阿呆」
心が。
心がおかしくなる?
光で傷を癒すことそのものが害だというのか。
「甘く考えるな。使えればいいという代物ではない」
師は、それ以上は何も言わず、丘を下った。幕屋に戻ったのだろう。
海からの風が、冷たく彼女を包みこんだ。
頭がガンガンする。それ以上に、フィアは胸のざわつきを感じていた。自分の身体なのに、違和感がある。感覚が鈍い。まるで、誰かに身体を貸していたかのような――その発想があながち間違いでないことを、フィアは感じ取っていた。
(記憶が戻るたびに、心がセシルに奪われる)
もし、本当に全ての記憶が戻ったら、私はどうなるのだろう?
その場で振り返って、剣を凪ぐ。今まさにフィアに襲いかかろうとしていた礫が、弾けて消える。
「その程度で、私は倒せない」
1年前とは違う。
礫に紛れて、死角からイルミナが迫ってきていることも、今は見える。
刃と刃がまた噛み合った。やや剣の重さに振られながら、叫びと共に、少女が何度も剣を打ち付けてくる。
黒い刀身は、夜闇に紛れて見えづらい。だが、それ以上にフィアの感覚のほうが冴えていた。剣を見なくても、およその太刀筋はわかる。手数でいえば防戦一方だが、イルミナの刃がフィアに届くことは無かった。
「もう、良いでしょう、イルミナ」
「こんな復讐になんの意味があるの? みんな千年前に滅んだのよ?」
イルミナが肩越しにフィアをみた。
深く息を吸って、告げる。
「私は、あなたの言うセシルじゃない。あなたもイルミナじゃない」
あっさりと、イルミナが肯定した。
予想外だった。
-----------------------------------
構想練りなおしていたら更新に時間かかちった。
でもあんまかわってない。
イルミナの真意につづく。
第2章 過去より 遣わされる者
4:牙
:
戦は終結をみせ、勝利を祝福するように、崖の先に黄金の海原が広がっている。眩しい夕日から吹き込む海風に身を委ねながら、傷む腕を抱える。
龍の島は、魔物をひきつける何かがあるのかもしれない。海を越えて、時折魔物の群が襲い掛かることがある。魔物から村を護るのが、軍部の役割だ。兵士として、誰かの盾となり剣となれることを、彼女は誇りに思っていた。
しかし、やっと一人前として扱われるようになったというのに、この様では先が思いやられる。
「どうした? その腕」
「いえ……」
前方で、師が同じように風に吹かれていた。彼女の視線から右腕が隠れるように、体の向きを変える。
腕は、少し皮が持っていかれただけで、骨まで響いていない。見た目の出血ほど深い傷ではないのに、気遣われるのは嫌だった。いつもより甲冑が重く感じられる。少し血が足りないのかもしれない。
水平線に沈みかけた斜陽が、眩しい。澄み渡る海を、戦で流された魔獣の血さえも、すべて暖かな光に染め上げられている。
「早めに衛生班のところにゆけ。化膿するぞ」
「……光で治します」
言い残して、踵を返した。浩龍の力を宿しているのだ。それぐらい、自分にだってできる。
「まて」
振り返ると、思いのほか近くに師が立っていた。
「光で自分の傷を治す? 本気か?」
「未熟ながら、それぐらい出来ます」
次の瞬間、脳天に硬いものが突き刺さった。
ごん、と鈍い音が走る。
油断していた。目の前を火花が散る。
それが拳骨だと気づいたのは、じわりと痛みが熱を帯びてからだった。
「何を……」
「馬鹿が。光をなんだと思っている」
言葉より先に手が出るのは、師の悪い癖だと思う。いい歳をして、言葉遣いが荒いところも。
ピラウスなのに。
「もしものときだけにしとけ。あまり続けていると、おかしくなる」
風が吹いて、師の髪が揺れる。前髪の奥に隠された、眼帯が目に入る。戦場で失ったとしか、聞き及んでいない。残された左の黒瞳は、真剣さを帯びていた。
「身体機能が低下する場合があるんですか?」
免疫力が下がるのだろうか、と考えたところに、もう一度拳骨が入った。
鍛え抜かれた硬い拳だ。何度も同じ場所にもらうのは堪える。
「……先生、あの、傷に響くのでやめてください」
「やかましい。この馬鹿弟子が」
不機嫌そうに、師が背を向けた。紺の軍衣が翻った。
「……お前の心が、だ。言わせるな、阿呆」
心が。
心がおかしくなる?
光で傷を癒すことそのものが害だというのか。
「甘く考えるな。使えればいいという代物ではない」
師は、それ以上は何も言わず、丘を下った。幕屋に戻ったのだろう。
海からの風が、冷たく彼女を包みこんだ。
* * *
「逃げるなっ!」
無茶な注文だ。
振り返らず、フィアは木々の間駆け抜けた。
振り返らず、フィアは木々の間駆け抜けた。
頭がガンガンする。それ以上に、フィアは胸のざわつきを感じていた。自分の身体なのに、違和感がある。感覚が鈍い。まるで、誰かに身体を貸していたかのような――その発想があながち間違いでないことを、フィアは感じ取っていた。
(記憶が戻るたびに、心がセシルに奪われる)
もし、本当に全ての記憶が戻ったら、私はどうなるのだろう?
その場で振り返って、剣を凪ぐ。今まさにフィアに襲いかかろうとしていた礫が、弾けて消える。
「その程度で、私は倒せない」
1年前とは違う。
礫に紛れて、死角からイルミナが迫ってきていることも、今は見える。
刃と刃がまた噛み合った。やや剣の重さに振られながら、叫びと共に、少女が何度も剣を打ち付けてくる。
黒い刀身は、夜闇に紛れて見えづらい。だが、それ以上にフィアの感覚のほうが冴えていた。剣を見なくても、およその太刀筋はわかる。手数でいえば防戦一方だが、イルミナの刃がフィアに届くことは無かった。
イルミナが刺突をはなった。フィアは軽く剣先で打ち払った。わずかな動作だが精妙な技だ。勢い余ったイルミナが、彼女の傍を一歩行きすぎた。
結果、彼女の背後をとる形になる。その細い背に剣を押し当てる。ざり、とフィアの剣の腹と、服が擦れた音を立てた。びくりとイルミナの身体がひきつった。
結果、彼女の背後をとる形になる。その細い背に剣を押し当てる。ざり、とフィアの剣の腹と、服が擦れた音を立てた。びくりとイルミナの身体がひきつった。
「もう、良いでしょう、イルミナ」
「殺しなさいよ…」
口惜しげなイルミナの呻き声が聞こえた。その言葉に胸が締め付けられる。フィアは言葉を重ねた。
「こんな復讐になんの意味があるの? みんな千年前に滅んだのよ?」
「だから?」
イルミナが肩越しにフィアをみた。
深く息を吸って、告げる。
「私は、あなたの言うセシルじゃない。あなたもイルミナじゃない」
「そうね」
あっさりと、イルミナが肯定した。
予想外だった。
構想練りなおしていたら更新に時間かかちった。
でもあんまかわってない。
イルミナの真意につづく。
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