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ちょ、去年帰国した留学生の友達からエアメールで誕生日祝いのカード届いた!
やべぇ涙出る!
でもやっぱり投稿する。
12/15投稿分のつづき
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CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より、遣わされる者
3:月夜に語られる
:
同じ宿の別の部屋。今度は二人部屋で、クノンとカシスが泊まっている部屋だ。
「成り行きだよ」
クノンはずっと、追い出されないように宿屋の主人と相談していた。明日、日が昇る頃には出て行く手はずになった。人当たりのいいクノンだからできたことだ。
「お前にしかできないことだった。おかげで助かったよ」
「そんなぽんぽん無神経に訊けるか! 俺は紳士なの!」
「変だな、とは思ってた」
「言霊に使っている言葉も、聴いたことがない。あれが龍族の言葉なら、一類特殊言語と同格だ。少ない単語でタスクをこなすのは簡単なんだろうなぁ」
ふいに、クノンが身体を起こした。枕を抱え、カシスと向き直るように、ベッドの上に座り込んだ。
「…僕に聞かせたくなかったってことでしょ?」
「言ったろ、成り行きだって。俺が無理矢理白状させたんだ。信頼とか、そんなんじゃねぇよ」
――人を斬ったことあるの?
――恋人?
(その割には、妙な勘だけ働きやがって……)
彼女の言葉を苦々しく思い出していると、クノンがカシスの表情に気づいたようだ。
「? どうしたの?」
クノンは何か言いたそうにしていたが、何も言わず枕に顔を埋めた。カシスは気づかれないようにこっそり笑った。さて、紳士なのはどちらだろうか。
打ち明けることが信頼なら、口を閉ざすことは裏切りなのか。そんなことはない。話さない優しさ、というのもある。それぞれが思い思いに生きているわけで、成り行き次第で、そのどれもが優しさになったりならかったりするだけだ。
カシスは、もう後悔したくないだけだ。
それは、誰かにとっての優しさになるだろうか。
----------------------------
ねちっこいヤツ……
つづくー
第2章 過去より、遣わされる者
3:月夜に語られる
:
「で? セシルっていう人が、フィアで? イルミナっていう子は、ずっとイルミナなの?」
「さぁ…フィアが言うには、セシルがフィアになったように、イルミナも別な誰かに生まれ変わってるんじゃないかって。でも、おそらくフィアとは違ってイルミナは完全に生まれ変わってて…あ、もうわけがわからん」
「ちゃんと説明してよ。僕だけ仲間はずれにしたんだから!」
クノンが拗ねた声をあげた。カシスは肩をすくめた。説明を求める割には、ずっとカシスに背を向け、ザックと向き合っている。荷物をまとめる手は止めてない。止める気もないのだろう。
同じ宿の別の部屋。今度は二人部屋で、クノンとカシスが泊まっている部屋だ。
「成り行きだよ」
「面倒くさいことは僕に押し付けてさぁ…」
クノンはずっと、追い出されないように宿屋の主人と相談していた。明日、日が昇る頃には出て行く手はずになった。人当たりのいいクノンだからできたことだ。
「お前にしかできないことだった。おかげで助かったよ」
「白々しい」
カシスは方眉を吊り上げた。滅多に怒らないクノンが、これほど不貞腐れているのも珍しい。ベッドに腰掛けながら、几帳面に荷を詰め込んでいく少年の背をぼんやりと眺める。
カシスから見れば華奢だが、気構えまで弱弱しいとは思っていない。短い付き合いだが、クノンは頑固だ。その上頭が切れるから、怒らせると面倒なタイプではある。
カシスから見れば華奢だが、気構えまで弱弱しいとは思っていない。短い付き合いだが、クノンは頑固だ。その上頭が切れるから、怒らせると面倒なタイプではある。
「なんで、セシルは龍族を滅ぼしたの? 本当に龍族はいなくなっちゃたの?」
「知るか」
「なんで肝心なところ訊いてないのさ」
荷をまとめ終わったらしい。パチン、パチンと順に金具を留める音が響く。
「そんなぽんぽん無神経に訊けるか! 俺は紳士なの!」
「だったらさぁ、初めから何も訊かなきゃいいのにさぁ」
クノンはザックをベッド脇に寄せると、そのまま自分も寝床に飛び込んだ。うつぶせに、顔はカシスと反対方向に向けて寝ている。よく言えば愛らしい、率直に言えば幼い。
「変だな、とは思ってた」
「うん?」
「《沈黙の森》で使ったフィアの言霊。彼女はただ龍の名を唱えた。精霊の名を言霊に用いるには、定義式、展開式、出力式、全てを精緻にしないと、何も起こらないか、バックファイヤが起きる。でも関係なかったんだ。彼女も龍なんだから、彼女自身が術式媒体になれば、僕らみたいに言霊に還元しなくてもいいんだ」
「…そうなのか?」
魔導学の話はさっぱりだ。
「言霊に使っている言葉も、聴いたことがない。あれが龍族の言葉なら、一類特殊言語と同格だ。少ない単語でタスクをこなすのは簡単なんだろうなぁ」
ふいに、クノンが身体を起こした。枕を抱え、カシスと向き直るように、ベッドの上に座り込んだ。
「…僕に聞かせたくなかったってことでしょ?」
「ん?」
「僕は信頼されてないってことでしょ?」
ひとつ、この少年について見誤っていた。クノンは好奇心旺盛だ。だが、それ以上に、他人との関係に敏感だ。だからどうとは言わない。彼がそういう暮らしをしてきたのだろう。他者を愛し、愛されて育ったという証拠だ。
彼にとって、友人と何かを分け合うことは、信頼の証なのだ。
彼にとって、友人と何かを分け合うことは、信頼の証なのだ。
どこか落ち込んだ顔をしているクノンをみて、思わず笑ってしまいそうになるのを堪えながら、カシスはまじめに答えた。
「言ったろ、成り行きだって。俺が無理矢理白状させたんだ。信頼とか、そんなんじゃねぇよ」
「ふぅん」
クノンは、いまひとつ納得いかないようだ。
こいつは、俺が何を言えば満足なんだろうか。普段ものわかりが良いだけにやっかいだ。
こいつは、俺が何を言えば満足なんだろうか。普段ものわかりが良いだけにやっかいだ。
「カシスってさぁ」
「あん?」
「意外と優しいよね」
「いつでも優しいでしょ、カシスお兄さんは」
どこか覚えのあるやりとりだが、言ってやると、クノンが心底驚いたように目を見開いた。
「うわあ……気持ち悪い」
「うるせ、クソガキ」
ははは、と声を出してクノンが笑った。少しだけ機嫌が良くなったようだ。気持ちを切り替える器用さも備えているのだ。
対して、フィアは不器用だ。前に進むことしか知らない。歩き疲れたなら、足を痛める前に休めばいいのに、何故か歩みを止めることなど思いつきもしない。
対して、フィアは不器用だ。前に進むことしか知らない。歩き疲れたなら、足を痛める前に休めばいいのに、何故か歩みを止めることなど思いつきもしない。
――人を斬ったことあるの?
――恋人?
(その割には、妙な勘だけ働きやがって……)
彼女の言葉を苦々しく思い出していると、クノンがカシスの表情に気づいたようだ。
「? どうしたの?」
「何でもねぇよ」
カシスは適当に手を振った。話したい気分じゃない。
クノンは何か言いたそうにしていたが、何も言わず枕に顔を埋めた。カシスは気づかれないようにこっそり笑った。さて、紳士なのはどちらだろうか。
打ち明けることが信頼なら、口を閉ざすことは裏切りなのか。そんなことはない。話さない優しさ、というのもある。それぞれが思い思いに生きているわけで、成り行き次第で、そのどれもが優しさになったりならかったりするだけだ。
カシスは、もう後悔したくないだけだ。
それは、誰かにとっての優しさになるだろうか。
----------------------------
ねちっこいヤツ……
つづくー
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