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今日はサンドイッチとカロリーメイトしか喰ってません。
空腹だからこそ妄想でおなか一杯になるんだ!
12/16投稿文のつづきー
空腹だからこそ妄想でおなか一杯になるんだ!
12/16投稿文のつづきー
CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より、遣わされる者
3:月夜に語られる
誰も居なくなった部屋で、フィアはひとりで天井を見上げていた。
第2章 過去より、遣わされる者
3:月夜に語られる
誰も居なくなった部屋で、フィアはひとりで天井を見上げていた。
覚えていない。いや、思い出せない。
セシルは、何か理由があって、ピラウスの力と彼女の記憶を失うわけにはいかなかった。そのために、何かしらの秘術を使った。
彼女の思惑どおり、力は失われなかった。“セシル”からこぼれでた浩龍の力は、長い時間をかけて、ゆっくりと形を取り戻し、“フィア”という器を得て蘇った。しかし、セシルの記憶は、完全には取り戻されない。
フィアにしてみれば、突然、抜き身の剣をわたされたようなものだ。使い方もよくわからないまま、近くに向けるべき相手がいるようにも思えない。ただ持っているのは危険だし、重い。なにより怖い。かといって、納める鞘もない。この剣を、どうすればいい?
(ただの剣だったら、捨てることもできた)
彼女を導いてくれるはずのセシルの記憶が失われたまま、フィアは2年さまよった。始めの1年は、それこそあてもなく。
転換点は、あの日。あの娘に再会したとき。
* * *
たったひとりで、当てもなく放浪していた。
弟を失い、大怪我を負って以来、夜は悪夢にうなされていた。見知らぬ誰かの夢。野宿暮らしが長いせいもあるが、疲労がたまって昼間は頭痛にさいなまれていた。そんなある日のことだ。
優しい春雨が降っていた。木々に囲まれた街道で、突然現れた少女に微笑みかけられた。
それが、イルミナだった。
「お久しぶりね、姉様」
再会と言っても、フィアには全く覚えはない。
見知らぬ少女に、わけもわからず殺されそうになった。
そのときは、どうにか殺されずに済んだ。イルミナの昏龍の力に触れて、龍の力の使い方を思い出すことができた。それで、その場は一命をとりとめた。
* * *
見知らぬ誰かの夢は、過去にあった現実なのだと知った。
イルミナを退けたあと、それまで何もなかったはずの彼女の左腕には、痣がはっきりと浮かび上がっていた。
そのときに、決めた。
失われた記憶が戻らないならば探しに行こう、と。
彼女は龍を探すことにした。無限の時を生きる龍ならば、龍族の末路を知っているかもしれない。セシルのことも、何か知っているかもしれない。
あの日に変わったことは、探すモノを決めたこと。龍を探して、さらに1年をさまよった。やっと見つけたのは、あの《沈黙の森》の坤龍だった。だが、坤龍は既に器を失くし、死んでいた。何かを訊き出す状態ではなかった。
(どうしてシルギルトアは死んでいたの?)
セシルが死んで、つまり龍族が滅んでから、およそ千年は経っている。その間に、何があったのだろうか。一抹の不安がよぎる。もしかして、他の龍もみな同じように死んでしまっているのではないだろうか。
(イルミナは、そのことに気づいているのかしら)
やはり、もう一度会わねばならない。
互いに剣を向けるだけだとしても、この世でたったふたりの龍族なのだとしたら。
ベッドから起き上がる。マントは、備え付けの椅子の背に掛けてある。
(もう逃げるのは、やめにしよう)
あの子が何度襲ってきても、そのたびに追い払えばいい。私なら、きっとできる。そうしてずっと、生きていけばいい。いつかイルミナの憎しみが絶えるまで。イルミナもセシルも、もう故人なのだ。私達のどちらかが死ぬ必要などない。たとえ、彼女の憎しみが絶えることがなくても、それでも仕方がない。ずっと、その気持ちに応えていこう。
昏龍の力に応えられるのは、浩龍の力だけなのだから。
マントを羽織ると、首に違和感を感じる。触れて、思い出す。市場でもらった、お守り。
誰だって、苦しみながら生きている。
私ひとりじゃない。
私は私のやり方で、乗り越えていくしかない。
そっと、右肩に左手を置く。熱い。痛みは和らいでいる。それほど、負担もないだろう。
『力は光を生み、光は輝きを与え、輝きは牙を持つ』
薄闇に包まれた部屋が、にわかに明るくなった。歯を食いしばる。右肩から痺れるような激痛が走る。
言葉はまだ終わっていない。力の流れが途切れないように、紡ぐ。
『分かたれし力、輝ける者。浩々たる空隙より現れよ――汝の名は、ファランゾルン』
――光で自分の傷を治す?
――もしものときだけにしておけ。あまり続けていると、おかしくなる。
――お前の心が、だ。言わせるな、阿呆。
気が遠くなっていた。誰かの声を聞いた。
ベッドに倒れていた。右腕をついて、身体を起こす。もう肩は痛まなかった。
確かにこんな無理を続ければ、心でも身体でも何かしら壊しそうではある。
(誰の声だったかしら)
フィアには、まだ思い出していないことのほうが多い。
進まなければ。先は長いのだから。
-------------------
精一杯のヒロイン。がんばってほしい。
つづく。
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