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ブログの見方を変えてみました。昇順から降順に。
かえって見づらい。かもしれない。
そんなこんなでつづき更新です!
「つづきはこちら」からどうぞ!
CHILDRENOFGROUND
第4章 千年の森
3:
「……遅いな」
さすがに疲れて、荷を降ろし、木にもたれかかるようにして座りこんでいた。だが、この姿勢からもう半刻は経っているだろう。先の戦闘も含め、ただ方角を見ているにしては時間がかかりすぎだ。
「カシス、何回目?」
同じように近場に座り込んでいるクノンがぼやいた。ハイルは、クノンと向き合うような位置で座り込んでいる。
他人事のようなクノンに、カシスは多少の苛立ちを覚えた。
「お前なぁ…… もとはといえば誰のせいだよ。変な内輪もめに巻き込みやがって」
もごもごとクノンが口籠った。
舌打ちする。カシスは、クノンが不安を感じていることはわかっていた。クノンとて、フィアを心配していないわけではない。ましてや負い目を感じていないわけでも。いつも冷静な少年も、先程から浮かない顔色だ。
クノンをみると、膝を抱えて顔を埋めている。カシスは深呼吸して、認めた。この苛立ちは、ただのやつあたりだ。
「そういえば、結局なんなんだ?」
カシスはハイルをあごでしゃくった。あまり品のよい仕草ではない。嫌そうにハイルが眉をひそめた。
クノンが気遣わしげな視線を向けてきた。
「……コンパスに細工したのは本当に悪かったと思ってるよ。巻き込んでごめん」
謝るなら、フィアにしろよ―― という言葉をカシスは飲み込んだ。自分が何を言ったところで、どうしようもない。なにより、クノンも同じことを考えているはずだ。
「それはいいさ。俺だって巻き込んだわけだしな」
カシスは鼻の頭を掻いた。人のことをとやかく言えた義理ではない。先の娼館での騒動を思い出すと、ばつが悪かった。
「まぁ、会ったときから、なんとなくそんな気はしてた」
気持ちを切り替えて、カシスがそう言うと、クノンは目を丸くした。
クノンの身の上を訊ねたことはない。が、なんとなく育ちのよさを感じさせる雰囲気を持っていた。
「僕のこと? 気づいていたの?」
カシスは肩をすくめた。ハイルがちらりと視線だけ投げかけてきたが、それには応えないようにする。
「使える魔法もそこらの魔道師よりも数段格上だしな。でもまぁ、その割にはそれらしいお供もいないし、変なやつだな、と」
高等な魔導学を習得するには、それなりのアカデミーに進学しなければ無理だ。才能が花開くかどうか難しい魔導学校に子供を進学させるは、豪商や貴族のような、裕福で安定した地位のある家だ。それぐらい誰だって予想つく。
目を閉じ、木の幹の形に沿うように、背中を伸ばす。荷物の重みに強張った背中が引き伸ばされた。多少緊張が緩む。その姿勢のまま、頭の後ろで手を組みながら、クノンを見ると苦笑していた。
「敵わないね…… 変だと思っても、一緒に旅してくれてたなんて」
素っ気無く告げる。
クノンは少しためらってから、顔をあげて、まっすぐカシスを見た。
「改めて名乗るよ。僕は、クノン・カストマイダー。オルトワ地方領主、カストマイダー侯爵の嫡男だ」
緩んだ背筋が、再び引きつった。
数秒ほど、思考も止まっていたようだ。それぐらい思いがけない言葉だった。
侯爵位ということは、貴族のなかでも上級階流だ。普通カシスのような凡人は、一生会うこともないような雲上人だ。
まさかクノンが貴族だとは、さすがにそこまで考えは至らなかった。しかし、わかった風な口を利いた手前、素直に驚くのは憚られた。咳払いをしてごまかすと、喉の奥からなんとか言葉をひねりだした。
「あー…… つまり、クノンは次期オルトワ領主、ってわけだろ?」
ふと、今までのクノンへの扱いがまざまざと思い出される。
まるで当然のように、小突いたり、怒鳴ったり、荷物持ちをさせたり――
(出るところに出れば、俺は罰せられるんじゃないのか?)
さあっ、と血の気が引く。
青ざめたカシスを気に留めることもなく、クノンは肩をすくめた。
「訳あって、数年、家から離れる必要があってね」
ハイルがぼそりと付け加えた。取り合うこともなく、クノンはハイルを示して続けた。
「で、こちらが、ハイル・ユーイ・コーフォリア。幼馴染で、僕の婚約者の兄にあたる人だ」
カシスは呆気にとられた。実感の湧かない話だ。カシスからすれば、この童顔の少年に婚約者がいるなんて、少々気が早い。当のクノンが当然そうな態度をしているので、貴族なんてそんなものだろうと納得することにした。
旅装束でそうも見えないが、妹がクノンの婚約者ということは、このハイルも同じ貴族なのだろう。
ハイル・ユーイ・コーフォリア……
はっとして、カシスは身を乗り出した。ハイルの顔をまじまじとみる。怪訝そうにハイルが眉根を寄せた。
「コーフォリア、だと?」
-------------------------------------------------
この話の世界観はどうなってるのかとか、いつかちゃんと書きたいです。
ヒロイン? なんですかそれわ?
第4章 千年の森
3:
風上に逃れて、少なくとも魔物の匂いが来ない場所まで避難する。距離にして50メートルも離れてない。フィアが戻ってくれば、見てわかる距離だ。
だから、気づかないはずがない。彼女が戻ってきたのなら。
「……遅いな」
さすがに疲れて、荷を降ろし、木にもたれかかるようにして座りこんでいた。だが、この姿勢からもう半刻は経っているだろう。先の戦闘も含め、ただ方角を見ているにしては時間がかかりすぎだ。
「カシス、何回目?」
同じように近場に座り込んでいるクノンがぼやいた。ハイルは、クノンと向き合うような位置で座り込んでいる。
他人事のようなクノンに、カシスは多少の苛立ちを覚えた。
「お前なぁ…… もとはといえば誰のせいだよ。変な内輪もめに巻き込みやがって」
「そうだけど……」
もごもごとクノンが口籠った。
舌打ちする。カシスは、クノンが不安を感じていることはわかっていた。クノンとて、フィアを心配していないわけではない。ましてや負い目を感じていないわけでも。いつも冷静な少年も、先程から浮かない顔色だ。
クノンをみると、膝を抱えて顔を埋めている。カシスは深呼吸して、認めた。この苛立ちは、ただのやつあたりだ。
「そういえば、結局なんなんだ?」
カシスはハイルをあごでしゃくった。あまり品のよい仕草ではない。嫌そうにハイルが眉をひそめた。
クノンが気遣わしげな視線を向けてきた。
「……コンパスに細工したのは本当に悪かったと思ってるよ。巻き込んでごめん」
謝るなら、フィアにしろよ―― という言葉をカシスは飲み込んだ。自分が何を言ったところで、どうしようもない。なにより、クノンも同じことを考えているはずだ。
「それはいいさ。俺だって巻き込んだわけだしな」
カシスは鼻の頭を掻いた。人のことをとやかく言えた義理ではない。先の娼館での騒動を思い出すと、ばつが悪かった。
「まぁ、会ったときから、なんとなくそんな気はしてた」
気持ちを切り替えて、カシスがそう言うと、クノンは目を丸くした。
クノンの身の上を訊ねたことはない。が、なんとなく育ちのよさを感じさせる雰囲気を持っていた。
「僕のこと? 気づいていたの?」
カシスは肩をすくめた。ハイルがちらりと視線だけ投げかけてきたが、それには応えないようにする。
「使える魔法もそこらの魔道師よりも数段格上だしな。でもまぁ、その割にはそれらしいお供もいないし、変なやつだな、と」
高等な魔導学を習得するには、それなりのアカデミーに進学しなければ無理だ。才能が花開くかどうか難しい魔導学校に子供を進学させるは、豪商や貴族のような、裕福で安定した地位のある家だ。それぐらい誰だって予想つく。
目を閉じ、木の幹の形に沿うように、背中を伸ばす。荷物の重みに強張った背中が引き伸ばされた。多少緊張が緩む。その姿勢のまま、頭の後ろで手を組みながら、クノンを見ると苦笑していた。
「敵わないね…… 変だと思っても、一緒に旅してくれてたなんて」
「そんなもんだろ、流れ者なんてのは」
素っ気無く告げる。
クノンは少しためらってから、顔をあげて、まっすぐカシスを見た。
「改めて名乗るよ。僕は、クノン・カストマイダー。オルトワ地方領主、カストマイダー侯爵の嫡男だ」
緩んだ背筋が、再び引きつった。
数秒ほど、思考も止まっていたようだ。それぐらい思いがけない言葉だった。
侯爵位ということは、貴族のなかでも上級階流だ。普通カシスのような凡人は、一生会うこともないような雲上人だ。
まさかクノンが貴族だとは、さすがにそこまで考えは至らなかった。しかし、わかった風な口を利いた手前、素直に驚くのは憚られた。咳払いをしてごまかすと、喉の奥からなんとか言葉をひねりだした。
「あー…… つまり、クノンは次期オルトワ領主、ってわけだろ?」
「立場としては」
ふと、今までのクノンへの扱いがまざまざと思い出される。
まるで当然のように、小突いたり、怒鳴ったり、荷物持ちをさせたり――
(出るところに出れば、俺は罰せられるんじゃないのか?)
さあっ、と血の気が引く。
青ざめたカシスを気に留めることもなく、クノンは肩をすくめた。
「訳あって、数年、家から離れる必要があってね」
「『必要』などない。お前が勝手に決めて出て行ったんだろう」
ハイルがぼそりと付け加えた。取り合うこともなく、クノンはハイルを示して続けた。
「で、こちらが、ハイル・ユーイ・コーフォリア。幼馴染で、僕の婚約者の兄にあたる人だ」
「婚約者って……」
カシスは呆気にとられた。実感の湧かない話だ。カシスからすれば、この童顔の少年に婚約者がいるなんて、少々気が早い。当のクノンが当然そうな態度をしているので、貴族なんてそんなものだろうと納得することにした。
旅装束でそうも見えないが、妹がクノンの婚約者ということは、このハイルも同じ貴族なのだろう。
ハイル・ユーイ・コーフォリア……
はっとして、カシスは身を乗り出した。ハイルの顔をまじまじとみる。怪訝そうにハイルが眉根を寄せた。
「コーフォリア、だと?」
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この話の世界観はどうなってるのかとか、いつかちゃんと書きたいです。
ヒロイン? なんですかそれわ?
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