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CHILDRENOFGROUND
第4章 千年の森
3:
クノンが頷いた。カシスはハイルを指差した。
「コーフォリアって、スヴァヌの大貴族じゃないか? 王族だろ?」
無表情に、ハイルが答えた。それでも王族に連なる家筋であることに違いないだろう。
カシスは驚いてクノンとハイルを交互に指差した。
「それが、婚約者?」
要らないことを言うハイルに半眼で毒づく。いちいち面倒な男である。
すっかり混乱して、カシスは髪の毛をかき混ぜた。まさか、眼前の魔道師の少年がこれほど立場のある人物だとは。短い付き合いだが、クノンには才覚がある。訳ありだか知らないが、今はこんな辺野で実績もなく放浪しているとしても、将来活躍することに疑いない。共に砂埃にまみれ、同じ旅路を歩んだ、このクノンが、である。
その要人に、自分がしてきたことといえば……
(オルトワには絶対近づかない…… 処刑される)
目を閉じ、眉間を押さえながら、カシスは深く胸に誓った。
ついでにカシスはひとつ疑問を口にした。ハイルに指を向ける
「じゃあ、爵位も立場もあんたのほうが上だろ? それでも『若様』なんて呼んだりするんだな」
向けられたカシスの人差し指を嫌そうに眺めながら、淡々とハイルが答える。
「さすがに四男坊に公爵位は与えられない。家筋がどうであれ、クノンは私の主君の子息だ」
貴族界の仕組みなんて、所詮カシスの及ばぬところだ。立場とか地位とかいったものが複雑に絡み合っていて、その絡み合いが非常に重要な意味を成している。クノン達が暮らしているのはそういう世界なのだろう。
「それで、お前は何者だ?」
突然、ハイルがカシスを見据えていった。
「俺? 俺は、別に……」
言われてみて、そういえばそうか、と気づく。気後れしてどうする。
「カシスだ。出身はカフルのほうだ」
素っ気無く告げる。気取ったところで大した名でもない。
「それはまた、随分遠くから来たな」
クノンが付け足した。ほう、とハイルが感心した声をあげ、しげしげとカシスを眺めた。
「しかし…… とても剣客には見えないな」
むっとして言い返すと、ハイルは首を振って、さらりと告げた。
「いや、腕は確かなのだろうが、風格がない。なんだか賊の類に見える」
クノンもそうだが、いまいちこのハイルという男が王族であるという実感がない。
「ハイルは生真面目なだけで、悪気はないんだ。軽く受け流してあげて」
面白がるようにクノンが言った。
「それで、フィアというのは? はぐれたのか?」
ハイルの言葉に、カシスとクノンは顔を見合わせた。こんな会話をしていても、彼女が戻ってきた様子はない。
「僕を追ってきたんでしょ、ハイル。どこまで見てたの?」
さらりとクノンが言ってのけた。ぎょっとして、カシスは顔をあげた。クノンは気づいた風もなく、続けた。ハイルも驚いて言葉を失っているようだ。
「あれが異能だ。ああいう風に、魔法を越えたようなことも平気でこなす」
クノンは続けた。カシスはあえて口を挟まなかった。なぜ正直にフィアのことを龍だと言わなかったのか、カシスには分からなかったが、クノンには何か考えがあるはずだ。
「道に迷ったから、フィアに上から方角を見てもらうことになったんだ」
ハイルが眉をひそめた。彼はカシスとクノンを見比べた。
「正確には、“道を間違えたことになったから”、かな。ハイルを撒きたかったから、あえて迷うように、コンパスに細工を」
ハイルが押し黙った。表情のない顔から、さらに表情がなくなったように見える。
「クノン…… お前は何も言わずに、私を撒くためだけにこんな原生林に仲間を連れ込んだのか?」
悪びれないクノンの態度に、ハイルが信じられない様子で首を振った。
「なんという…… 相変わらず勝手な奴だな!」
間髪おかず、しれっとした顔でクノンは言い返した。いつものやりとりなのだろう。ハイルは何か言いたそうだったが、それ以上は追求せず、話を元に戻した。
「方角を見ているにしては、時間がかかって――」
ハイルは急に口をつぐんだ。何か遠くを見ている。
「?」
ハイルの視線を追うと、先程戦闘があったところだった。
そこに、一匹の金色の獣が佇んでいた。
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王侯貴族でも気にせずタメ語な主人公。
つづく。
第4章 千年の森
3:
「そうだよ」
クノンが頷いた。カシスはハイルを指差した。
「コーフォリアって、スヴァヌの大貴族じゃないか? 王族だろ?」
「血筋は、な。王位継承権など、塵ほどもない」
無表情に、ハイルが答えた。それでも王族に連なる家筋であることに違いないだろう。
カシスは驚いてクノンとハイルを交互に指差した。
「それが、婚約者?」
「私ではない。私の妹のミレアが、このクノンと婚約しているのだ」
「わかっとるわ」
要らないことを言うハイルに半眼で毒づく。いちいち面倒な男である。
すっかり混乱して、カシスは髪の毛をかき混ぜた。まさか、眼前の魔道師の少年がこれほど立場のある人物だとは。短い付き合いだが、クノンには才覚がある。訳ありだか知らないが、今はこんな辺野で実績もなく放浪しているとしても、将来活躍することに疑いない。共に砂埃にまみれ、同じ旅路を歩んだ、このクノンが、である。
その要人に、自分がしてきたことといえば……
(オルトワには絶対近づかない…… 処刑される)
目を閉じ、眉間を押さえながら、カシスは深く胸に誓った。
ついでにカシスはひとつ疑問を口にした。ハイルに指を向ける
「じゃあ、爵位も立場もあんたのほうが上だろ? それでも『若様』なんて呼んだりするんだな」
「私はいま、カストマイダー家に仕えているのだ」
向けられたカシスの人差し指を嫌そうに眺めながら、淡々とハイルが答える。
「さすがに四男坊に公爵位は与えられない。家筋がどうであれ、クノンは私の主君の子息だ」
「ハイルは気にしすぎだよ。それ以前に、僕らは幼馴染じゃないか」
「ケジメというものがあるだろう」
「……とりあえず、面倒くさいってのはわかった」
貴族界の仕組みなんて、所詮カシスの及ばぬところだ。立場とか地位とかいったものが複雑に絡み合っていて、その絡み合いが非常に重要な意味を成している。クノン達が暮らしているのはそういう世界なのだろう。
「それで、お前は何者だ?」
突然、ハイルがカシスを見据えていった。
「俺? 俺は、別に……」
「名を聞いているのだ」
言われてみて、そういえばそうか、と気づく。気後れしてどうする。
「カシスだ。出身はカフルのほうだ」
素っ気無く告げる。気取ったところで大した名でもない。
「それはまた、随分遠くから来たな」
「カシスは、凄く剣が強いんだよ。ハイル」
クノンが付け足した。ほう、とハイルが感心した声をあげ、しげしげとカシスを眺めた。
「しかし…… とても剣客には見えないな」
「なんだ、弱そうだって言いたいのか?」
むっとして言い返すと、ハイルは首を振って、さらりと告げた。
「いや、腕は確かなのだろうが、風格がない。なんだか賊の類に見える」
「おい、クノン。お前の兄貴、いちいちむかつくんだけど」
クノンもそうだが、いまいちこのハイルという男が王族であるという実感がない。
「ハイルは生真面目なだけで、悪気はないんだ。軽く受け流してあげて」
面白がるようにクノンが言った。
「それで、フィアというのは? はぐれたのか?」
ハイルの言葉に、カシスとクノンは顔を見合わせた。こんな会話をしていても、彼女が戻ってきた様子はない。
「僕を追ってきたんでしょ、ハイル。どこまで見てたの?」
「会話が聴こえる距離ではなかった。あれは人なのか? 飛んでいくのは見えたが……」
「フィアは《聖法使い》だよ」
さらりとクノンが言ってのけた。ぎょっとして、カシスは顔をあげた。クノンは気づいた風もなく、続けた。ハイルも驚いて言葉を失っているようだ。
「あれが異能だ。ああいう風に、魔法を越えたようなことも平気でこなす」
「まさか……、本当にいるのか? 聖法使いなんて」
「居るところには居るみたいだよ。……その話はあとで」
クノンは続けた。カシスはあえて口を挟まなかった。なぜ正直にフィアのことを龍だと言わなかったのか、カシスには分からなかったが、クノンには何か考えがあるはずだ。
「道に迷ったから、フィアに上から方角を見てもらうことになったんだ」
「迷った? 迷ってこんなところに来たのか?」
ハイルが眉をひそめた。彼はカシスとクノンを見比べた。
「正確には、“道を間違えたことになったから”、かな。ハイルを撒きたかったから、あえて迷うように、コンパスに細工を」
ハイルが押し黙った。表情のない顔から、さらに表情がなくなったように見える。
「クノン…… お前は何も言わずに、私を撒くためだけにこんな原生林に仲間を連れ込んだのか?」
「敵を騙すには、まず味方からっていうだろ」
悪びれないクノンの態度に、ハイルが信じられない様子で首を振った。
「なんという…… 相変わらず勝手な奴だな!」
「その点については心から反省しているよ」
間髪おかず、しれっとした顔でクノンは言い返した。いつものやりとりなのだろう。ハイルは何か言いたそうだったが、それ以上は追求せず、話を元に戻した。
「方角を見ているにしては、時間がかかって――」
ハイルは急に口をつぐんだ。何か遠くを見ている。
「?」
ハイルの視線を追うと、先程戦闘があったところだった。
そこに、一匹の金色の獣が佇んでいた。
--------------------------------------------------
王侯貴族でも気にせずタメ語な主人公。
つづく。
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