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一週間があっという間です。
毎日が土曜ならいいのになぁ~…(゜o゜)


CHIlLDRENOFGROUND
第4章: 千年の森




 
 
 獣のラーガは速かった。跳ねるように倒木を越え、あっという間に視界の先まで行ってしまった。

 フィアも全力で追い駆けていたが、すでにラーガを見失っていた。勘を頼りに、ラーガが消えた方向に向かって走り出す。木立に紛れて金色の毛並みが見えないかと、時々目を凝らして周囲を見渡す。

 すると、視界の向こうで、赤い光が走った。続いて、爆発音が響く。

 足を止め、光がみえた方角をじっとみる。

 もう一度、赤い光が刺して、地面が揺れた。

(魔法……)

 胸がざわついた。

 光が見えた方向へ駆け出す。木の根を跳びこえ、最速を尽くす。

 別れたあとに不測の事態があったのはフィアだけではないのかもしれない。カシス達だって、こんな奥深い森で、強力な魔物に襲われたかもしれない。

 あと十メートルのところで、巨大な蛇の姿を捉える。

 その先で、対峙している人影が見える。

 知らない男だ。短槍を構えて、詠唱を続けている。さっきの魔法は、この男のだろう。そして、その男の背後を見て、フィアは心臓が跳ねあがった。

「カシス!」

 目を閉じ、力なく横たわっているのが、この距離でもわかった。

 叫びに反応したのは、短槍を構えた男だけだ。

「誰だ!?」

 誰何の声に、フィアは答えなかった。

 走りながら、息を吸う。肺が引きつって痛んだ。

『浩々たる空隙より、現れよ――』

 ―― そなたは、何のつもりもなく、すべてを滅ぼしかねない ――

 脳裏をよぎる声に、一瞬だけ足が鈍る。

(違う)

 フィアは、止まりそうになる足に喝を入れた。

 怖がってはいけない。怯えてはいけない。

(もともと傷つける力だ)

 わかっていたことだ。だからこそ、私はなんのためにこの力を使うのか、考えなくちゃいけない。

 この力が私のものなら、私は見定めなくてはいけない。

 こちらの気配に気づいたのか、蛇が鎌首をもたげて振り返った。

 本当に、この力で何かを救いたいなら。

(私は、自分で力の使い方を見出さなくちゃいけないんだ!)

 抜き身の剣を与えられたなら、自分がその鞘になるしかない。

『――ファランゾルン!』

 膨れ上がった力が指先で収束し、鋭い光の奔流となって打ち出された。

 光は蛇の巨躯に突き刺さると、蛇の全身を包んで一際強く光った。

 音もなく。衝撃もなく。

 光が、蛇の存在を奪って、砕いた。

 森に静けさが戻る。

 力を放った感覚が、まだ腕に鈍く残っている。反動ではない。ぞっとするほど、確かな手応えだった。

 唇を噛む。まとわりつくものを振り払うように、カシスが居たところまで駆け寄る。

 髪を短く刈った青年が、憔悴もあらわにフィアを見た。

「貴女は ――」

 聴きたいことはこちらも同じだったが、堪える。

「自己紹介はあとで。それよりカシスは? 何があったの?」
「蛇に咬まれた。毒かもしれないが、しかし――」

 傷が大きい。穿たれた傷穴からは、まだ赤い雫がこぼれている。魔物の相手をしながらでは、十分な手当はできなかっただろう。
 
 この程度の傷口なら、光で癒すこともできる。だが、解毒となると、成功するかもどうかも怪しいほど複雑な術になる。フィアの脳裏には、聖樹の泉が浮かんでいた。あの泉の水ならば、解毒できるかもしれない。

 いちかばちかだ。

「わかった。私がなんとかする」

 口早に告げ、有無を言わさず青年を押しのける。

 まずは止血だ。呼吸を整え、カシスの左肩に手を添えて目を閉じた。

 傷を癒すには、集中の度合いが違う。無心に、力を練る。

『力は光を生み、光は輝きを与え、輝きは牙を持つ』

 血のめぐりが変わったように、指先から全身が温かくなる。

『分かたれし光、輝ける者。浩々たる空隙より現れよ―― ファランゾルン』

 最後の言葉とともに、暖かさが奪われ、手を添えた相手に移るのが分かった。

 眼を開けると、かわらず昏睡状態のカシスが横たわっていた。衣服は赤黒く染まっているが、傷は塞がったはずだ。

 血に塗れ横たわる姿は、弟のことを思い出させた。
 
 記憶に飲み込まれそうになるのを、首を振ってこらえる。

 最後にレオは、『生きて』と言ってくれた。

(それなら、悔いてばかりでは、ダメよね? レオ)

 カシスは和らいだ表情で、深く呼吸をしている。

 立ち上がろうとして、そのとき、違和感を覚えた。

 光での治癒は、激痛を伴う。たとえ昏睡していても、反応は見せるはずだ。それなのに、カシスは痛がる様子も見せず、穏やかに眠っている。

 失敗したのだろうかと思った途端、視界がぐらりと傾いた。

「どうした?」

 掛けられた声にこたえることもできず、フィアはそのまま卒倒した。





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立ち向かおうと決めて、「ハイできました」なんて人はそんな居ないよね。
だからがんばるんだよね。そうだよね。
そしてハイルを全く無視してるフィア。
そんなヒロインが好きだ(*´∀`*) 

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