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キャラの性格が荒んでるのは、意図的な設定なはずだけど、
やっぱり自分の内面からにじみでてる感じなのは否めない。
おひさしぶりです、風霜です。
05/11投稿分のつづき。
まだ終わらないよー
やっぱり自分の内面からにじみでてる感じなのは否めない。
おひさしぶりです、風霜です。
05/11投稿分のつづき。
まだ終わらないよー
CHILDREN OF GROUND
第3章 山上の宴唄
10: とおで ともに ねむりましょ
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第3章 山上の宴唄
10: とおで ともに ねむりましょ
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5人を乗せた馬車は、夜の街道を賭け続けた。
荷台に乗ると、フィアはばったりと眠り込んだ。気絶といったほうがいいのかもしれない。起きていても何かと煩いので、彼女には申し訳ないが返って好都合だった。付き添うようにエトとカシスは荷台に乗ったが、クノンは御者台に乗りこんだ。
「よく無事だったな?」
咎めるように聴こえたかもしれない。エトはばつが悪そうな顔をみせた。
「アギルが助けてくれたの。あの人にも甲斐性があるのね」
「まぁ、そんなことだろうと思ったさ」
カシスは肩をすくめた。あながち嘘でもない。まさかこんな形で落ち合うとは想像していなかったが、彼女は無事であるような気がしていた。
「あら、そう?」
「俺は、親父の話はアギルにしかしてない」
あのとき、別れ際に、彼女は父の名を口にした。ということは、アギルが仕事の内容をエトに話したことになる。それほどあの情報屋と親密な関係にあるならば、何かしら策があるのだろう、と思っていた。
エトは足を抱えるように腕を組むと、少し拗ねたような顔つきになった。
「ふぅん。もっと心配してくれてるかと思ったのに」
「したよ。でも、まぁ、しっかりしてるから、エトは」
「あらあら、どうもありがと」
いいながら、エトは余り嬉しくなさそうだった。まずい予感がしてカシスは話題を逸らした。
「なんで親父のことを? アギルから聴き出したのか?」
「だって私、ちっちゃい頃にお世話になったもの」
情報屋も、似たようなことを言っていたが、彼女が言うと全くニュアンスが違って聴こえるから不思議だ。
「世話に?」
「命を助けてもらったわ。アギルと一緒に」
そういって、彼女は悪戯っぽく笑った。
「兄妹なの。私とアギルは」
それは、意外な返答だった。恋仲か、そうでなくても仕事の相方なのかと思っていた。そういわれてみれば、彼女の目の色とアギルのそれはよく似ている。
「あんま、似てないな」
「ふふ、よく言われるわ」
エトはしばらく面白がって笑っていたが、ふと静かになってカシスの顔を覗きこんだ。
「素敵な人だったわ。カシスのお父さん。よく似てる」
「そうか」
そういわれても、実感もない。カシスは、顔も覚えていないのだから。返答に迷って、カシスは頬を掻いた。ガラガラと車輪の走る音がより一層やかましく響く。
「ね…… フィアは、どうしてこんなに傷だらけなの?」
ためらいがちに、エトが切り出した。彼女はさっきからそれが訊きたかったのかもしれない。
荷物を枕代わりに、横向きに寝かせている。マントに包まれた細い身体が、浅い呼吸を繰り返していた。僅かに覗く横顔は、苦しそうだ。応急手当はしたが、だいぶ失血しているのではないかと思う。出切れば安静にしてやりたい。が、領土を越えて安全な場所に出るまでは、しばらく望めない。彼女の体力が持つことを祈るばかりだ。
力なく横たわる姿は、ただの娘だ。その彼女がどうして、傷だらけなのか。
「…… 俺にもよくわからん」
目に見える傷は、彼女が言うに暴発でついた傷らしい。だがきっと、フィアの傷はそれだけじゃない。龍であるから。そうかもしれない。自分には関係のない過去の出来事に振り回されている。でも、それ以上に、彼女は深く傷ついている。
「ごめんなさいね……」
「え?」
顔をあげる。心苦しそうに、視線を伏せたエトがいた。そういえば、逃げる助けをしてくれたのはエトだが、フィアを攫う手筈をしたのもエトだ。複雑な心中なのだろう。
「……謝られる義理はないわよ」
カシスがかける言葉を探しているうちに、くぐもった呻き声が聞こえた。もぞり、とフィアが動き出す。
「いいのよ。これで…… ただ…… それだけのこと」
「おい、まだ寝てろよ」
マント越しに、彼女の肩に触れようとする。が、力強い動きでその手を振り払われる。
「な、なんだよ?」
「うっさいわね! あんたはほんっとに――」
頭を抱えながら、まるで噛み付くような勢いで、彼女は何かを言おうとした。だが、ふいに口を紡ぐと、虚空を見つめて静かになった。
「どうした?」
「……もういい」
フィアは、起き上がった。体育座りのまま、自分の膝に寄りかかるようにしている。
「フィア、起きてて大丈夫なの?」
「ええ。大丈夫」
エトの言葉に、フィアは少し微笑んで頷いた。気を使っているように見えた。
「なんか、俺にだけ態度悪くないか? 恩人だろ」
「じゃあ訊くけど、なんで私を斬らなかったの?」
フィアが鋭い視線を向けてきた。剣呑な雰囲気を目の当たりにして、エトが落ち着かない様子でふたりを見比べていた。
「……またか……」
カシスが肩をすくめた様子を、フィアは見咎めた。
「なに?」
「面倒くせぇんだよ、そういうの」
「面倒ってなによ」
カシスは頭を掻いた。言ってやりたいのは山々だが、自分もフィアも疲れている。こういうときにくどくどと長話をしたところで不毛だ。
「もういいから寝ろよ、フィア。疲れてんだろ」
「なんでそう…… 気楽でいられるの?」
カシスはフィアと目を合わせないように気をつけた。目が合えば、構わず殴ってしまいそうな気がした。
「お前はどうして自分のことしか見えないんだよ」
「なによ――」
「俺はな、そういう剣の使い方をしたくねぇんだよ」
剣帯から外し、肩で抱えていた剣を揺らす。
自分の力など、悪魔を狩るには及ばないし、悪魔のような狩人には追いつけない。それでも、剣の使い道は自分で決める。カシスが望んでいるのは、むやみに命を奪う剣じゃない。斬らなくて済むなら、それに越したことはない。
「私だって、こんなもののために誰かを死なせるなんてもう嫌よ」
彼女は左腕を振った。腕を覆っていた黒布はほとんど破れて、下から龍の痣がのぞいている。
「だったらいいじゃねぇか、誰も死んでない」
「……死んだかもしれない」
フィアが沈んだ声をだした。
「あの、人買いの連中。死んでたんじゃないの?」
「さあな。見てない」
「カシスだって、死んでたかもしれないのに」
「生きてるだろうが、この通り」
確かに左肩は疼くが、見かけの割に傷は浅いし、もう血も止まっている。
だが、彼女は訊いていない様子で、膝を抱えて俯いた。
「私なんかが生きてたところで、騒ぎにしかならないのよ。いっそ、殺してくれたほうが」
フィアは不意に、言葉に詰まった。見やると、エトがフィアを胸に抱いていた。
「そんな、寂しいことを言わないで」
エトの横顔は前髪に隠れて見えなかった。フィアの背中を抱きながら、右手で優しく彼女の髪を梳っている。
「あの館から逃げ出すために、フィアを利用したこと、謝るわ。でも感謝してる。あなたが、こんな山奥まで来てくれたから、私はまた自由になれた。あなたが」
エトの声は決して大きくはなかったが、不思議と車輪の回る音に掻き消されず、よく響いた。
「あなたが生きていてくれたから、あなたが無事に逃げてくれたから、私も笑って生きなおせる」
「私は何もしていない」
フィアがきっぱりと告げた。エトは優しくかぶりを振った。
「あなたにとってはそうかも。でも私にとっては、とても大切なことをあなたはしてくれたわ。誰かを傷つけてまで幸せになるなんて、辛いもの。だから、ね? 死んじゃったほうが良かったとか、そんなことないのよ」
彼女は体を離して、フィアの顔を覗きこんだ。
「ありがとう、フィア」
不思議そうに、フィアはエトの顔を覗きこんでいた。
カシスは幌の外に目を向けた。
中天の雲間からにじむ月が、浩々と輝いていた。
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データが吹っ飛んだ都合、あれこれ修繕してるうちに時間が経ちました。
今度こそ! 今度こそ最後!
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