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12/24投稿文のつづき


CHILDREN OF GROUND
第2章 過去より 遣わされる者
4:牙



「それが、なんだっていうの?」
 
 少女が笑った。微笑というより、怒りや憎しみで引きつっているような顔だが。

 イルミナの返答に、言おうと思っていた言葉を失う。

「ねぇ、もしかして、何か勘違いしているの? 姉様」
「何か、って――」
 
 激しい金属音がして、イルミナが離れた。会話に気がそれてしまっていた。

 間合いをとったイルミナは、剣を一振りすると、フィアに突きつけた。

 フィアはちらりと自分の剣に目を落とした。一筋、赤い色が付いている。無理な避け方をして、イルミナのほうが傷ついたのだ。だが、彼女は構わず大きな目でフィアを睨んでいた。

「復讐…… そうね、復讐ではあるわ。千年、私を苦しめたんだから」
「……セシルが一族を滅ぼしたからでなく?」

 無難な言葉を選ぼうとして、かえって失敗したことが相手の表情でわかる。イルミナの、剣を持つ手が震えていた。

「……姉様が裏切ったのよ ……だからわたしは」 

 わななく唇から、言葉が絞りだされる。

 歪んだ声とは裏腹に、目だけが言葉の壮絶さを物語っていた。
 
「わたしは昏龍を呼び出すしかなかった。龍の島を飲み込んだのは、わたしだもの」
 
 どういうこと? 

 島を…… 一族を滅ぼしたのはイルミナ?

(でも、セシルは―― サイを殺し、4人の剣龍を殺した)
 
 だが、その前後の記憶はない。

 そういえば、龍族はどうやって滅亡したんだろう。
 
 どんな最後だった? そのときセシルはどこにいた?
 
「そんなことも―― ほんとうに何も覚えてないの?」

 イルミナの咎める声が、夜の森の響く。
 
 復讐じゃない? 一族を、兄を殺された恨みじゃない?
 
(もし、イルミナのいうことが真実なら)
 
 剣を持つ手が震えた。

 なぜ、彼女はここにいるのだろう?

「何のために…… 私を殺すの?」
「すべて忘れて、のうのうと生きているの? ……それだけで憎たらしいわ」
 
 イルミナが言葉を吐き捨てた。

「わたしをイルミナじゃいられなくしたのは誰?」
「……私達には関係ないでしょう」
 
 にわかに信じがたく、上の空で呟いた言葉に、イルミナの眦が裂けた。

「『わたしたち』ですって?」

 イルミナが声を荒げた。

「誰のことを言ってるの? いったい何を言ってるの?」

 剣を振って激昂する姿を、フィアはただぼんやりと眺めていた。話の理解が全く追いついていなかった。

「何もわかってないくせに! お前はセシルの抜け殻にすぎないじゃない! お前には、虚ろな私の苦しみなんてわからないんだわ!」
 
 空いた片手を自らの胸に手を添える。芝居がかった仕草だった。

「兄様を殺したのは誰? 引き金を引いたのは誰!? 最後のパラウスを奪って、わたしを死ぬことも生きることも許されない存在にしたのは誰なの!?」
「? どういう――」 
「貴女じゃない、セシル=ピラウス! 自分だけ、龍として生き続けるなんて! 姉様こそ、なにもかも失えばよかったのに!」
 
 まさか、本当に。
 
 千年前から姿を変えずに存在し続けたとでも――

 イルミナの弾劾は続く。彼女は、黒刃の剣を、地面に突き立てた。

「ピラウスが失われれば、わたしはわたしに戻れるの! パラウスの真似をする必要も、あいつの人形である必要もなくなるもの!」

 彼女の背後から、夜の闇とは違う、禍々しい影が湧いた。

---------------------------
朝焼けには遠い。
つづく。

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