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ひっさびさの更新。
なんだかんだで、私は元気です。
CHILDREN OF GROUND
第4章 千年の森
1: 迷い人
:
第4章 千年の森
1: 迷い人
:
「あれ……?」
背の高い木々を乗り越えたとき、フィアは集中が途切れそうになった。
龍の力で紡いだ風の心地よさや、蒼く晴れた空、遠くに連なる山々、彼女の下に広がる広大な森を見た瞬間、不思議と懐かしく感じられて、気がそれたのだ。
(前にもこんな風に飛んだ……?)
飛ぶことなんて、滅多にしない。ひどく疲れる。一時的に高く飛び上がるのは簡単だが、効率的に移動しようと思うと難しい。だから、今のように高く長く飛んだことがあれば、記憶に残っているはずだ。
空高くに吹く強い風に煽られながら、フィアの視界が捉えたのは人里ではなく、巨大な木だった。
(大きな木)
周囲の木に比べても、倍は傘が広い。そして背も高い。
あんなに大きな木があるなんて。
あれだけ大きな木が育つなら、それだけこの森は古く、人が踏み入っていないということだ。
ああいう大樹をなんとかと呼ぶのだ。確か名前がある。なんだったか。
フィアは足元を覗き込んだ。落ちれば只ではすまない高さだ。だいぶ風に流されてしまったらしく、カシスやクノンがいるはずの位置からだいぶ遠ざかっていた。
(……少しぐらい、寄り道してもいいかな)
急ぐ旅ではない。しなけれなならないことがあるわけでもない。
では、何のための旅なのか、といわれれば―― 正直なところ、あまり色々考えたくない。色々あったあとだ。フィアはかぶりを振った。
(いいか。とりあえず方角を……)
そのとき、何か大きな影が、彼女から日の光を遮った。
* * *
「なんだこの猿は!」
「猩々の仲間だろ」
ハイルの動揺を余所に、カシスは向かってくる魔物を冷静に捌いていた。
猩々は、山岳地帯や密林に好んで住まう、猿に似た魔物である。種が豊富で、場所によって呼び名が違うようだが、よく知られている名称は『猩々』だろう。
「さっきの魔法に寄ってきたんじゃないかな。猩々はファカルティが濃い場所を好む」
クノンの指摘にカシスはため息をついた。
「じゃあ、てめぇらのせいじゃねぇか。変なモン連れ込みやがって」
クノンのほうに飛び掛ってきた猩々の胴を、剣で凪ぐ。けたたましい鳴き声とともに、魔物が地面を転がった。クノンの詠唱が終わるまで、カシスがクノンを庇うのは、いつもの連携パターンだ。
「おい、貴様、口を慎め!」
ハイルの叱責に、カシスは、はっ、と吐き捨てるように笑った。
「随分な態度だな! 何様のつもりだ、おにいさんよぉ!?」
ちらりとハイルの様子を伺うと、どこから取り出したのか、慣れた様子で短槍を振り回していた。時折小規模の魔法を織り交ぜては、次々と追い払っていく。その合間に、ハイルが声高に答える。
「答える義理などない。それと、おまえに兄と呼ばれる筋合いもない!」
「律儀だな、おい……」
口の中で指摘して、後は無視を決め込む。ハイルとはどうにも反りが合いそうにない。
『――その身に纏うは火炎の鎧、左手には烈火の槍、右手には光明の盾、額に頂くは日輪の冠。選ばれし者、唯一なる者、誉れ高き名を焦土に刻め!』
そのときクノンの魔法が完成して、突然現れた炎の渦が、突き刺さるように猩々たちを飲み込んだ。
火に怯えたのか、甲高く威嚇の声をあげながら、猩々たちは後退していく。だが、そのまま去るわけではなく、火の合間を縫って、俄然立ち向かってくる。
すかさずハイルが前に出た。
『記されし軌跡のままに、エルダ・オスク!』
ハイルが唱えると、クノンの火炎が一部切り取られ、形を変えた。
留まろうとする猩々たちに、火炎の刃が追い討ちをかける。その光景に、カシスも目を見張った。
圧倒的な火力の末、群がる魔獣たちは焼け焦げ、あるいは木々の向こうに去っていった。
再びあたりが静まったところで、カシスは剣を納めた。額の汗を拭う。
「怪我は?」
「ないよ」
「ない。問題ない」
口々に無事を確認して、詰めていた息を吐く。
ハイルがクノンに声をかけた。
「急に合わせて悪かったな。負荷は?」
「平気だよ。むしろ、よく合わせてくれたね。助かったよ」
さっきの魔法の話だろうか。興味はあったが、訊ねたところで理解できるよう説明してもらえる気がしなかった。
あたりには、魔物の血の匂いと、魔法で焼かれた肉の焦げ臭い匂いが残った。地表も焦げているが、延焼しそうな様子はない。その魔道師が優秀かどうかは、魔法の効果を制御できるかどうかでわかる。優秀であれば、自身の作った魔法の炎で、標的以外のものを焼くことはない。
火の手があがる心配はなさそうだ。しかし、魔物の死臭は、他の魔物を惹きつけやすい。カシスは嘆息して、前髪をかきあげた。
「とりあえず、ここを離れたほうがいいだろうな」
「フィアはどうするの?」
クノンに言われて、はっとする。
そういえば少女の存在を忘れていた。あまり離れると、合流は難しくなる。カシスは首の後ろを掻いた。
そういえば少女の存在を忘れていた。あまり離れると、合流は難しくなる。カシスは首の後ろを掻いた。
「……しょうがねぇな。すぐ戻ってくるだろうし、そこらへんで待つか」
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連携魔法。詳細は日を改めて解説。
ハイル兄さんがいると(私が)楽しい。
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連携魔法。詳細は日を改めて解説。
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