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10/26投稿分のつづき
CHILDREN OF GROUND
第1章 沈黙の森
1: はじまりは森から
「まったく…秘宝がなかったら、こんな森誰が来るか」
第1章 沈黙の森
1: はじまりは森から
「まったく…秘宝がなかったら、こんな森誰が来るか」
周りには、十数頭の魔物の群れ――
見かけは犬か狼のようだ。だが、その禍々しい赤の目、ダガーナイフのような巨大な爪は、動物から異常発達した魔力をもつ生物――魔物以外には考えられなかった。
魔物の包囲の中心に、二人の男が背中あわせに構えていた。
一人は、少女のような華奢な体つきをした少年だ。色素の薄い枯葉色の髪に、金の瞳。整った童顔がか弱そうな印象を際立たせていた。少年は、全く似合わない白いバンダナを額に巻き、紫色のローブに身を包んでいる。先端に深青色の石が施された杖を片手に、魔物を見渡している。
もう一人は、先ほどの少年とは対照的である。黒髪黒目、長身でしっかりした体つきが目立つ。少年よりも年上のようだが、そう歳は離れていないだろう。動きやすそうな軽装で、見かけにあった剣を慣れた様子で構え、背後の少年と似たように周囲の魔物に油断なく注意を払っている。
剣を持つ方が吐き捨てた言葉に対し、杖を構える方が軽く肩をすくめた。
「日が暮れた頃に動き出して、獲物が足場の悪いところに入った途端取り囲む。常套手段だね、カシス」
二人が立っているところは斜面だった。四足歩行の魔物には何の苦もないだろうが、普通の人間である彼らにとっては不利な地形だ。追い討ちをかけるように膝下まで生えた野草が邪魔である。
カシスと呼ばれた長身の男は、苛立った様子で舌打ちをした。気のない様子で、背後の少年に声を掛ける。
「余裕そうだな。なんか秘策でもあるんですかね? 魔導師のクノン様」
「ひとつだけかな」
クノンは苦笑いを浮かべながら言った。
「強行突破」
「大魔法でドカンと一発、ってのは?」
カシスがうめいた。魔物たちは低い唸り声をあげて、タイミングを見計らっている。
カシスの軽口に、クノンは律儀に言い返した。
「魔法の威力や精度は詠唱の長さに比例する。これじゃ、厳しいな」
「わかってるって――!」
言い終えぬうちに、魔物たちは一斉に飛び掛ってきた。
『疾風よ、討て!』
クノンが叫んで杖を振ると、見えない風の刃が魔物を切り裂いた。
カシスも待っていない。鋭く一歩を踏み込むと、一番近くに迫っていた魔物を紙一重で避け、そのわき腹を素早く切りつけた。返す刃で首を薙ぐ。真横から飛び掛ってきた二匹目の顔を思いっきり蹴り上げた。
再びクノンが呪文を叫んだ。今度は炎が生まれ、三匹の魔物のすべてを飲み込んだ。火を恐れて、魔物の包囲が広がる。巨大な火の塊は、夜のはじめを迎えた周囲を赤々と照らし出し、地をなめた。焦げ臭い匂いが広がる。
一瞬の交錯。二人は慣れた様子で戦闘を展開し、あっという間に片付けていく。
このまま圧勝で終わるかと思えたとき――
「――っと!?」
カシスが斜面に足を取られた。どうにか踏みとどまるが、背後からの攻撃を避けきれなかった。魔物はカシスの背中に飛び乗り、鋭い爪を立てようとした。
「ちっ!」
彼は両手から剣を離し、背中に背負った荷物に手をかけ、振り回すように肩から降ろした。魔物は荷物にしがみついたままだった。構わずカシスは荷物ごと魔物を投げ捨てた。
『疾風よ、討て!』
クノンの声にはっとすると、また魔物が目の前に迫っているところだった。しかし魔物の爪は、魔法によって切り刻まれ、カシスに届くことはなかった。
その魔物は地を転がり、二度と起き上がっては来なかった。
唐突に、沈黙が戻ってくる。
ふう、と一息つきながらクノンを見ると、クノンは他に魔物が隠れていないかを警戒しているようだった。
カシスはもう一度あたりを見回してから、クノンに声を掛けた。
「片付いたか?」
「そうだね」
クノンも頷いた。周囲には、魔法の炎によって草が焦げた臭いと、夕暮れの薄寒さに包まれていた。
「……あれ?」
額の汗を拭っていたカシスは、あることに気づいてきょろきょろと周囲を見渡した。
クノンが近くに寄って来て、怪訝そうな顔で訊ねてくる。
「どうしたんだい?」
「荷物が消えた」
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つづく。
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つづく。
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